第七話 お泊り会その十一
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「楽じゃなくても時間とか手間はね」
「かなり違うのね」
「そうなの。順番に作れば」
「ううん、そうだったの」
「そうよ。それでさっきのお話だけれど」
「うん、エクレアね」
彩夏はそのエクレアを一個食べた。それから赤ワインを自分で青い陶器のコップに入れてその中の七割程を一気に飲んでからこう言った。
「黒と黄色よね」
「つまり、よね」
「虎の色じゃない」
虎、それは即ちだった。
「阪神の色よね」
「そうね。阪神よね」
「阪神の選手エクレア食べたら強くなるかしら」
彩夏も祈る様にして言う。
「虎の強さを身に着けて」
「その強さをね」
「とにかくこのまま暗黒時代に戻ったら」
彩夏の言葉も切実なものだった。彼女の野球の好みもここでわかる。
「絶対に嫌だし」
「じゃあ今度このエクレア甲子園に贈ろうかしら」
「あっ、最近チェック厳しいしそれに生ものだから」
「贈るのはなのね」
「そう、よくないから」
「そうなのね。じゃあ止めておくね」
「選手には頑張って欲しいし」
彩夏は自分の望みをさらに言う。
「監督もね」
「前の監督よりね」
里香が言う。里香はフルーツの中の洋ナシを切ったものを小さな、スイーツ用のフォークを使って食べている。
そうしながらこう彩夏に言ったのである。
「ちょっと。頑張って欲しいかなって」
「そうよね。私のお父さんもっとはっきり言ってるわ」
「何て言ってるの?」
「辞めろって」
実に阪神ファンらしい言葉だった。
「ファンに謝罪しろって」
「そう言ってるのね」
「流石に手足を縛ってひざまづいてとは言わないけれど」
何処かの国の大統領とは違うというのだ。
「それでもね」
「辞めろって言ってるのね」
「もう即座にね」
こう言うのが阪神ファンだ。チームを愛するが故に。
「もう負けたら凄くてね」
「暴れるの?」
「まずは自棄酒飲んで」
そしてだというのだ。
「ネットに書き殴ってるわ」
「あの掲示板とか?」
「そう、2ちゃんねるでね」
悪名も高いそのサイトでだというのだ。
「もうね。本当にね」
「暴れてるのね」
「辞めろとか謝れとか」
「阪神ファンだとまだましよね」
里香は話を聞いて言う。確かにまだ、だった。
「もっと酷い人一杯いるから」
「そうそう、かなりね」
「質も量もね」
そうしたことを言うファンもかなり多いというのだ。
「甲子園とか本当にね」
「里香ちゃん甲子園も行くのね」
「お父さんとお母さんがファンだから」
ここでも両親を話に出す里香だった。
「子供の頃から時々言ってるけれど」
「あそこはメッカだからね」
阪神ファンの聖地だ。他ならぬ阪神タイガースの本拠地だ。
「もう本当に」
「そ
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