プレリュードその一
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万華鏡
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「お姉ちゃんまだ?」
「あっ、もういい時間よね」
夫の言葉にだ。妻は壁の時計を見て応えた。
「そろそろね」
「起こさないと駄目だろ」
「そうよね。信也は起きているのに」
小学生と思われる小さな男の子はテーブルの上にいる。そしてだ。
その席でトーストを食べている。そして夫婦がいる。
だが席は三つではなかった。もう一つあった。
しかしその席は空いていた。妻はその席を見て言うのだった。
「全くね」
「相変わらずだな、本当に」
「今日始業式なのに」
それでもだとだ。妻はぼやいて話していく。
「お寝坊さんなんだから」
「昨日何時に寝たんだ?」
「十時位だったかしら」
「今六時半だぞ」
夫も壁の時計を見ながら言う。
「もういい時間だろ」
「八時間半寝てることになるのはね」
「寝るのはいいけれどな」
「寝る子は育つだからね」
「だからそれはいいけれどな」
父としてだ。子供の安眠は有り難いことだった。睡眠は食事と並んであらゆる健康の源であるからだ。動いてばかりでは身体は壊れてしまう。
だからこう言うのだった。だがそれでもであった。
彼は首を捻りながらだ。こうしたことも言ったのである。
「けれど遅刻までしたらな」
「お話にならないわよね」
「寝るのももういいだろ」
八時間半も寝ればだというのだ。
「そろそろ起こすか」
「そうするわ。っていってもね」
今度は母が言う。妻でもあり母でもある。このことは見る立場から異なる。
「何ていうか。目覚まし五つも持ってるのに」
「全然起きないな」
「寝起きが悪過ぎるわ」
「そのことも昔からだな」
「本当にね。すぐに寝てね」
そしてだというのだ。
「一旦寝たら中々起きないんだから」
「横で爆発が起こっても起きない感じだからな」
「目覚ましじゃなくてダイナマイト仕掛けようかしら」
挙句にはこんなことまで言う始末だった。
「それか時間になったら甲子園にワープさせるとか」
「六甲おろしか」
「ええ、それを聞かせるとかね」
「そうできればしたいな」
冗談の会話だがだ。二人のそれはしみじみとしていた。
「本当にな」
「そうね。まあとにかくね」
「今は起こすか」
「そうしてくるわ。じゃあ」
母は自分から言ってだ。そのうえでだった。
一旦三人でいるリビングから離れてだ。そのうえでだった。
家の二階にあがりその奥の部屋の扉を開けた。するとだ。
女の子の部屋そのままに兎や猫のぬいぐるみ、それに机がある部屋の一隅にあるベッドが膨らんでいるその部屋が出て来た。そのベッドのところに来てだ。
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