44:狂乱
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「――――……ッ、うわぁああアアア”ァアアアア"ア"ア"アァアアアアアア"ア"ア"ア"ッッ!!!!」
「な、なんだコイツッ!? ……ッ、ラアッ!」
その叫びに慄いたデイドが本腰を入れ、ようやく槍をその手から引き抜くことに成功した。
その時に槍を握っていたユミルの手のひらがブシッと切り裂かれ、そこから小さな赤いダメージエフェクトが散る。さらにデイドの蛇矛には毒が塗布してあったのか、ユミルのHPバーが緑色の枠に覆われ徐々にHPが減る《ダメージ毒》状態異常のアイコンが表示される。
だがHPバーは微塵も減らず、むしろ回復……いや、それを一瞬も垣間見せない勢いでHPを削り、上書きされている。
大鎌の唯一にして使用者のHPを蝕む、呪われたスキル《デモンヘイト》。
そのステータス上昇エフェクトは、その勢いを視覚的にも現しているのか、赤かったそれがみるみる黒へと近付いている。
その変色は、まさに今の彼の狂乱の程を表しているようで――――
「いや……待て……」
俺ははたと気づく。
SAOというMMORPGにおいてもエフェクトは様々な場面で登場する。ソードスキル使用時をはじめ、回復アイテムを使用したとき、特別な効果を持つ食べ物を食べたとき、時には感情の激動に合わせて顔を真っ赤になるなどの感情エフェクトなど、その分類は多岐に渡る。その中で、今ユミルが放つステータス上昇エフェクトもその一つだ。
しかし……効果を得れば得るほど、身に纏うエフェクトが『変色する』、などという仕様は無かったはずだ。
エフェクトは一律して一色限定であり、あまつさえ使用中に他色に変化するなどという事はない。
過去に『この世界では、敏捷値による高速移動の上限が存在するのか』を調べようとしていた、とある物好きな攻略組プレイヤーが、ひたすら己にあらゆる種類の敏捷値上昇アイテムや装備品を使い、実際に公開実験していた場を俺は見たことがある。
そのプレイヤーは現在で知られているありとあらゆる敏捷値上昇の方法を全て駆使し……結果、瞬間的ではあったものの、俺すらも軽く凌駕する俊足っぷりを確かに成果として残していた。
しかし。
その時には幾重もの恩恵を受けていたはずであろう彼のエフェクトは、確かに段階的に派手にはなっていたものの……変色などは一切していなかった。
ゲームの世界であるが故に、これらエフェクトは非現実的な表現現象であるが……それ故に、この差は明らかにおかしい。ましてや使用者の感情に呼応して変色するなど、あくまで1と0の機械的なプログラムで作られたこの世界であるが故に、まずありえない。……これには何か絶対的な理由が……
いや。いや…………少し待て。思い出せ。
死神ことユミルは、俺と出会った当初は……たしか赤と黄の織り交ざった、|赤
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