暁 〜小説投稿サイト〜
故郷は青き星
第十二話
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
維持運営してきたのは他でもなく誇りと伊達(見栄)と酔狂(物好き)である。舐められたままで居られるわけが無かった。
「あなた落ちついて」
 そう言うユーシンの目は殺人者のようにテレビに映る女子アナウンサーを見据えていた。
「落ち着いていられるか!」
「どうせ、この尻尾にウンコを付けた様な女はおしまいなんだから」
 何故この親子が他人の尻尾にウンコが付いている事にしたがるか分からないが、普段温和なユーシンも怒り心頭の様で冷酷に告げる。
 次の瞬間、生放送中のスタジオのセットに数名のスタッフが走りこんできて、問題の女性アナウンサー捕まえると文字通り引きずり去って行く途中で画面が青一色に切り替わると『ただいま放送事故により、番組の放送を一時中断しております。視聴されている皆様方には大変ご迷惑をおかけしております……』というアナウンスが流れる。

 トリマ家に限らず、元領主だった名門氏族の地元での人気は高い。元々強いリーダーに服従するのを是とするフルント人の気質において、強いリーダーシップを発揮するから領主たり得たのであり、連盟加入後の社会構造の変化からその影響力を弱めた事で領主の座を降りたが、その後も基幹艦隊の司令官として新たな力を持ち、それを維持し元領民達を率いて戦う姿に対し、領主だった頃以上の畏敬の念を持っている。
 実際、地元の年寄り達の間ではポアーチは「うちの殿様」とエルシャンは「うちの若様」と誇らしさと親しみを込めて呼ばれている。
 その為、放送を見ていた年配の局長が即時に放送中止を指示した直後に「この番組終わった。俺のキャリアも終わった」と漏らしたり、『うちの若様の嫁御に何言うだ!』と苦情が殺到するわ、他のテレビ局がこの件に関して批判を始めるわ、この報道番組のみならずそれ以外の番組スポンサーからも自社のCMや番組中で自社名を一切出すなと釘を刺される一方で、今後のスポンサー契約は打ち切ると宣言されてしまう。

「貴方が手を下すまでも無かったでしょう」
「そうだね」
 ポアーチとユーシンの2人は特別番組で謝罪と釈明を続ける問題の放送局の放送と、同じく特番を組んで批判を続ける他の局の放送を夜通し見ていた。
 各スポンサー企業は、敢えて他の放送局を通して問題の放送局とは今後一切のスポンサー契約をしないと宣言し、この問題とは無関係を主張する。
「うわぁ……正直ひくわ」
 最初は殺す殺さないと物騒な発言をしていた割には、刻一刻と深刻さを増し行く展開に何もここまでやらないでもとポアーチは思い始めていたが、隣に座るユーシンは笑顔で画面を見つめているが、時折クスクスと哂うのが怖くてたまらない。
 番組の中で放送局の社長が記者会見を開いて必死に頭を下げて「これから直接お2人に会って謝罪したいと思います」と言っているが、周りの記者の1人から
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ