第175話
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「へいへいーへい!!
一三勝九敗、テメェのフォークボールも大した事ねーなーっ!!」
上条は短めのホウキを両手で掴み、小刻みにヒュンヒュン鳴らしながら制理を挑発する。
「黙れッ!!
九敗もしておいて減らず口を・・・
っていうかさっきは硬式を使ってしっかりとフォークを投げれたんだから、硬式があれば貴様なんぞ相手にならないわよ!!」
一対戦ごとに負けた方が五分間全力で草むしりをする、という新ルールが導入されてからの上条と制理のヒートアップぶりは半端ない。
白熱する対戦を体育館の壁に背中を預けながら見ている麻生はため息を吐く。
(いつになったら帰れるんだ?)
実際に彼が担当する雑草は全部抜き取ったので、この二人の勝負に付き合う必要は全くない。
しかし、帰ろうとすれば制理が終わるまで待て、と怒鳴りながら言うので仕方がなく待っている。
この勝負もすぐに終わるだろう、と思っていたが思っていた以上に白熱して、終わる気配が見えない。
バットを振り回して上機嫌な上条とは対照的に、白球を握り締めた制理は肩を大きく動かしてぜーぜーと息を吐きながら、携帯電話の画面で時間を確認して、
「大体、完全下校時刻までまだ三〇分あるわ。
ここから逆転する事も可能ッ!!」
(まだ三〇分もあるのか。)
制理の言葉を聞いた麻生はうんざりとした表情を浮かべる。
ちなみにだが、麻生はこの対戦を一度だけした。
一緒に雑草抜きをしていた麻生もこれに参加すべき、と上条は考えホウキを麻生に持たせた。
彼自身、勝負にならないぞ、と前置きしておいて制理に硬式のボールを創り、渡す。
渡す理由は、場外ホームランを打つつもりだから、制理が持っているボールが無くなったら困るだろう、と配慮らしい。
その挑発的な発言を聞いた制理は、スカートの中が見える覚悟で全力の投球フォームをとり、全力で投げる。
おそらく最初で最後になるであろう。
投げた球は下に落ち、フォークボールへ変化する。
それを見極めた麻生は、ボールの芯とホウキの芯を合わせ豪快に振りかぶる。
カァン!!、と気持ちのいい音と共に、ボールは体育館のコンクリートの壁を超えて、どこかへ飛んで行ってしまった。
この勝負以降、麻生が二人の勝負に加わる事はなかった。
「つか、お前のボールってちゃんと落ちているか?」
「落ちてるって言っているでしょうが!
すごいフォーク!!
バッターの手前でガクッと急降下しているのが何でわからない訳!?」
「ええー?
単に失速して放物線を描いているだけなんじゃ・・・」
「ちゃんと見ろォォおおおおおおおおおッ!!」
制理が全力で吼えながらボールを投げ放つ。
ギュオオ!!、と迫り来る白球に反応するように、上条の身体はフルス
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ