第175話
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って話の流れを変える。
「門限?
そんなんちょろっと工夫すればどうとでもあるんだけど。」
サラリと言う美琴に麻生は思わずため息が出た。
だが、話を逸らすという目標は達成できたようだ。
「でも、確かにちょっとチェックが厳しくなっているように感じるわね。
ここ最近は慌ただしくなってきたからかもしれないけど。
前は新聞も読まなかった連中も、携帯電話のテレビ機能でニュースをチェックしたりネットで情報サイトを検索したりと忙しいみたいだし。」
「・・・・・」
「ま、流石に誰でも気になるわよね。
あんな風になったらさ。」
美琴が言っているのは、おそらく九月三〇日の事だろう。
今の『見えない戦争』の引き金となった、直接的な一件。
麻生はその一件の中心に立っていた。
表ではなく裏の方だが。
ダゴン秘密教団。
彼らが裏で動いていたのは間違いない。
これは麻生の予想だが、彼らはローマ正教すら自分達の計画の駒に扱っている可能性がある。
それほど、彼らは異質で異常だ。
美琴は空に浮かんでいる飛行船の側面に設置している大画面に視線を向けていた。
今はニュース番組が流れており、ローマ正教派による大規模なデモ行進や抗議行動について報道されている。
彼らの事も気になるが、こちらの事も無視できない状況まで進んでいる。
このデモなどはいずれ学園都市まで影響を及ぼす。
それに一番最初に巻き込まれるのは警備員である黄泉川愛穂。
次に芳川桔梗や吹寄制理だ。
(何とかしないと、まずいな。)
暴動などを鎮圧する力を麻生は持っている。
それを振り回した所で根本的な解決にならない。
「どうなってんのよ。
九月三〇日に何が起きたかなんて知らないけど、別にこんなの望んでなかったじゃない。
あの一件が引き金になったなんて言われても、当の学園都市は静かなモンじゃない。
何でこいつら、勝手に殴り合って勝手に傷つけ合ってんのよ。
黒幕は顔も出さないくせに、こいつらだけが苦しめられるなんておかしいじゃない。」
美琴の言葉を麻生は黙って聞く。
黒幕。
例え、神の右席を倒した所で、黒幕を倒した所で、ダゴン秘密教団を倒した所で、この暴動が静まる事はない。
悪い奴らを倒したらそれで終わり、という段階を超えている。
『星』という人間には到底扱えない能力を麻生は使える。
だが、それも今は何の役にも立たない。
暴動に参加する者を一人ずつ倒した所で、それが良い結果に繋がる訳ではない。
「どうなってんのよ。」
もう一度繰り返すように言った美琴の言葉が、麻生の耳に聞こえる。
どうにかしないと、と珍しく麻生の胸に柄でもない気持ちが芽生えていた。
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