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蒼き夢の果てに
第4章 聖痕
第30話 アルビオン編の後日談
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し、気になって、その奇妙なアイテムを見つめ直してみる俺。

 ふむ。大きさとしては、直径が大体十センチ程度の手の平サイズ。色は翡翠。全体的に丸い作りで足は三本。上部は穴の開いた形の蓋に成っていて、細かな意匠が施されている様子もなく非常にシンプルなデザイン。

 ……って言うか、これって多分、香炉だと思うのですが。

「なぁ、タバサ。何故に、こんなトコロに、香炉なんかが有るんや?」

 そう聞く俺。但し、それと同時に

【シノブ。その香炉は問題が有るのです】

 ……と言う強い警告。これは、ダンダリオンからの【念話】なのですが。
 そして、俺が指差す香炉をしばらく見つめたタバサが、一言、彼女に相応しい声で、その香炉の正体を告げた。
 そして、そのタバサと同時に、俺の精神(こころ)の中に、やや高い声質のタバサとは違う少女の【声】が響く。

誘いの香炉(いざないのこうろ)
【誘いの香炉なのです】

 そう。ゆっくりとした落ち着いた口調のタバサと、かなりの早口で、少し焦った雰囲気のダンダリオンの【念話】が同じ内容を俺に伝えて来たのでした。
 そうして……。

【使った者に望みの夢を見させる魔法のアイテム。このアイテムは、普通に使う分には問題がないのですが、タバサのように、現実では取り戻せない物を持つ人間が、夢の世界でそれを手に入れた場合……】

 ダンダリオンのみが、その香炉の効果を【念話】で伝えて来る。

 成るほど、つまり、
 現実(うつつ)は夢、そして、夜の夢こそ真。……と成る可能性が高いと言う事ですか。

 ……いや、俺に、その気持ちを否定する事が出来る訳は有りません。
 タバサに何が有って現在の彼女が形作られたのかは判りません。しかし、彼女は元々、大公家の姫で、普通に考えるのならば、ごく普通の少女として育って来たはずです。

 その普通の少女が父親の不審死、自身の暗殺未遂に、母親が毒を煽らされた結果の精神異常。そして、生家の取り潰し。
 こんな過酷な運命に晒されていたのですから、今の彼女の表面上に現れている性格は仕方がないと思いますし、少しぐらい怪しげなアイテムによって精神の安定を求めたとしても不思議ではないでしょう。

 まして、少なくとも俺が召喚されてから彼女は、この誘いの香炉を使って眠った事は一度も有りません。

 つまり、彼女は逃げ込む先を持って居ながら、その誘惑に打ち勝つ事が出来たと言う事なのですから。

 そう考えながら、俺は何の気なしにその誘いの香炉と言う魔法のアイテムを持ち上げて眺めて見る。

 大きさから考えると、予想よりは少し重い雰囲気ながらも、それでも通常の翡翠製の香炉とそう違いが有る訳では無いその誘いの香炉をしげしげと見つめる俺。

 こ
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