第3章 白き浮遊島(うきしま)
第29話 死体を飲み込むモノ
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「――タバサ」
港での戦闘の緊張が解け、それと同時に街を襲っていた魔物の気配も徐々に減って来ている。
この雰囲気ならば、もう大丈夫でしょう。後は、仕上げの掃討作戦が残っているだけです。
俺の呼び掛けに、タバサは直接言葉にして答える事は無かったのですが、しかし、彼女は俺に近付いて来て、普段通り右側に並んだ。
そして、俺と同じように、自らが生命を奪ったその生命に対して、彼女なりの方法で哀悼の意を表したのでした。
尚、その場に転がって居た存在。九天応元雷声普化天尊の雷で無力化された元ワルドの姿をした何者かが、黒い消し炭状態の人間らしき姿から、何時の間にか翼を持った異形の姿と変わっていました。
そう。今、俺とタバサの目の前に横たわっている存在は、見た目は人とも、そして、鳥とも知れない異形の存在と変わっていたのです。顔は鳥のようで有り、同時に人でも有る。そして、何故か片方の羽根……人間で言えば左腕に当たる部分だけが欠けた存在に。
しばし、沈黙が辺りを包んだ。今、この場所を支配しているのは、月の女神と、未だ燃え続ける炎だけ。
もっとも、こんな擬似的な死を悼むようなマネをしたトコロで、本当の意味で今日、俺たちが奪って仕舞った生命の魂が癒される事などないのかも知れません。
ただ、俺に出来るのはこうやって死を悼む事と、後は、俺の奪って仕舞った生命を覚えていてやる事。ただ、それだけの事しか出来ません。
ふと気付くと、何時の間に戻って来たのか、ジョルジュと、そして、キュルケも同じように、タバサの右側に並んで死者を送る葬儀の参列者と成っていた。
そして、それから、時計の秒針が三回、周回を繰り返す間、その奇妙な送葬の列は続いたのでした。
「世界樹に関係が有って、風と冷気を操る巨大な鳥。更に、死と関係するとなると、こいつは死体を飲みこむモノ、フレースヴェルグと言う事になるのかな」
さて。何時までも死を悼んでばかりも居られないか。生者には生者としての仕事や義務が存在していますから。
そう考えた後、普段の説明口調に戻る俺。
それに、伝承に因っては、フレースヴェルグに関しては、左の羽根の無い姿で描かれる場合も有ります。コイツが人間の姿を取っていた時に左腕が無い状態で居た事も、この異形の存在の正体がフレースヴェルグならば説明は付くと思いますしね。
そして、俺達が見ている目の前で、そのフレースヴェルグとも、人間ともつかない何者かが、ゆっくりと崩れて行く。
まるで、彼が生前支配していた風の精霊に全てが変わって行くかのように。
もっとも、これで、こいつがルイズ達と行動を共にしていたワルド子爵なのか、それとも何ら
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