十一話〜噂のあれ〜 3月24日修正
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た時の違和感がようやく明確な確信となって表れたのだから。
その後、本人たっての希望で恭也と軽い打ち合いをさせたが驚きの実力だった。
渡された木の小太刀を右手に構えたその体勢を軸に恭也の技を尽くいなしていく。
どうやら邦介君は小太刀くらいの小さい得物を得意にしているようで、素早くステップを踏みながら恭也を翻弄する。
大人顔負けの筋力と、人並み外れた速さを持つ息子の攻撃を、小枝のような小さな子供の腕で動かされる小太刀がまるでそこに何も無く、ただ動かしているだけのように見えるのに易々と攻撃が防がれて、とうとう息子は邦介君の小太刀を軸に、まるで柔道の投げ技でも見ているかのように綺麗に投げられてしまったわけだけど。
姿はまったく逆なのに、まるで兄が弟のお願いを仕方なく聞いているかのような風景だった。
武術なんてものとは無縁の、なっちゃいない構えなのにそこから飛び出るのは思わず見惚れてしまう程に洗練された動作。
そんな、あの歳にしては不自然な程完成された動きを体得している彼だけど、まだ彼を見ていて胸中に渦巻く違和感は消えない。
例えば、何故彼の目はよく見ると奥の方がキラキラと光っているのか。
例えば、偶に左腕がプランプランとなっているのはどういうことなのか。
例えば、恭也との打ち合い中に体がバチバチと鳴っていて、その時は僕らの流派、御神の奥義、神速にすら迫るスピードが出ているのはどういうことなのか。
例えば、突如として邦介君の後ろに現れる小さな黒い穴は無害なものなのか。
……君は本当に人間かい?
たくさん聞いてみたいことはあるけど、本人が話してくれる機会が来るまで待ってみようと思う。
そう僕らがのんびりと温泉に入ってリラックスしていた時のことだった。
「んー? 人は……いないよな? さすがに真昼間に風呂に入る奴なんていないよな?」
丁度僕が先程まで考えていた張本人がやってきたのは。
「……? この声は……っ!?」
「うぇ!? 蒼也いたのか? ……あ、それと士郎さんもこんにちは」
「あ、ああ。邦介君も温泉に入りに来たのかい?」
だが、湯煙から現れた彼の姿を視認すると同時に僕は驚きで一瞬思考が止まった。
蒼也君も普段からあまり変化が無い表情なのに今は目を大きく見開き口もパクパクと開け閉めしている。
あの、常に落ち着いていて何事にも冷静に対処出来る蒼也君が動揺している。
それほど彼の姿は普段とは一線を画していた。
「あれ? どうしたんですか。……って、そうか。そういえばこの体見れば当然か」
不思議そうに手を顎に当て、首を傾げた彼は、自分の全身を見てすぐに納得した。
肋骨の少し下の所を横一文字に……まるで、胴体が真っ二つに両断でもされたかのような痛
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