第3章 白き浮遊島(うきしま)
第28話 ラグナロク?
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しき死体や重症者たちの中心にたった一人だけ残った生者として。
探している時には出会う事は出来なかったクセに、最終局面では簡単に出会う事が出来ると言う事ですか。
周囲を包む気は、月神が支配する死と静寂の気配。船が燃え盛る炎を上げ、桟橋が燃えている、『炎』が支配している世界のはずなのですが、何故か、この場所は死と静寂が世界を支配していた。
青白き月光を浴びて佇むは、昨日の逢魔が時以降、何度も目にする事と成った派手な羽飾りの着いた帽子を斜に被り、グリフォン隊所属の騎士である証のマントを羽織った姿の白い仮面の男。
但し、左腕に関してはマントに隠されて見る事は出来ず、声に関しても、似ているような気はするのですが、仮面によってくぐもった声に聞こえている為に、確実にワルド子爵の声だと断言出来る状態ではない。
「なぁ、ジョルジュさんよ」
俺はタバサの端整な容貌を見つめながら、しかし、口ではジョルジュの方に呼び掛ける。
そう、ただ一人の生者として、と先ほどこの目の前の仮面の男の事を表現しましたが、それはもしかすると間違いの可能性も有ります。
少なくとも、真っ当な生者から感じる物とはまったく違う気を、俺はこの眼前の仮面の男から感じていたのですから。
「戦闘が始まる前に、キュルケを連れて、ここから全速力で逃げて欲しい。
少なくとも、オマエさんの判断で、戦闘に巻き込まれる事のない場所までは退避していて貰いたい」
本当の事を言うのなら、タバサの方にそう言いたいのですが、彼女の瞳がそれを拒絶している。そして、キュルケが傷付く事も、彼女が望んでいない事だけは確実。
まして、離れている間にタバサが襲われる可能性も否定出来ない以上、俺から彼女を離れさせる、と言う選択肢は選びようがない。
「貴方とタバサ嬢だけで勝てる相手ですか?」
ジョルジュからの当然の問い。確かに、この竜殺し殿が居てくれた方がかなり安心なのですが……。
「こんな事件に巻き込んで仕舞った事を後悔しているキュルケに、彼女一人で逃げろと言ったトコロで受け入れてくれる訳はない」
表の理由はこれ。裏の理由は、はっきり言うとキュルケは邪魔。
タバサには、俺と同じように物理反射と魔法反射の仙術が施され、俺の気を通した護符を装備して貰っている。つまり、属性として風と雷に関しては完全に無効化出来ると言う事。
この状態なら、ヤツが金行で俺の属性、木行を剋さない限り、この戦闘の間はワルド子爵の魔法の直撃を少々受けたとしても大丈夫なはず。
しかし、キュルケの防御力は一般人。そんな彼女にこの戦場に居られても、役に立つドコロか邪魔にしかならない。
彼女自身がどう思うかは、また別問題ですけどね。
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