第3章 白き浮遊島(うきしま)
第28話 ラグナロク?
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次の瞬間、横たえられた四体の魔獣を中心にして、木火土金水の順番……つまり、相生の順番に光る曲線に因って円が描かれ、それと同時に、その内部……それぞれの呪符を頂点とした一筆書きの星形……今度は相克の順番で引かれた直線によって、五芒星が浮かび上がる。これは、陣。所謂、魔法陣、魔術回路と呼ばれる物。
そう、これは晴明桔梗を使用した、次元孔を強制的に開く仙術。
そして、懐から取り出した何かを、その晴明桔梗の中心に向け、短い口訣と共に放つ俺。
次の瞬間、その晴明桔梗の中心に突き立つ……釘。
刹那。それまでの雰囲気から、空気が一変した。
そう。晴明桔梗内側だけ、まるで重力が変わったかのように、四頭の魔獣たちが床に押し付けられ、次の瞬間……。
異世界へのゲートが開いた。
その異世界のゲートの奥では黒い闇がゆっくりとうねり、禍々しい風が、こちらの世界で横たえられた四頭の魔獣を包み込む。
一応、俺個人としては、ティンダロスの猟犬たちがやって来た世界へのゲートを開いた心算なのですが、俺の実力ではそこまでの精度を持っていないのは事実です。まして、彼らの元々居た世界と言うのは、曲線が支配する世界ではなく、時間と角が支配する世界と言う、俺にはイメージする事さえ難しい世界。それに、最悪、コイツらをこの俺とタバサの居る世界から追い返す事が出来たら良いだけなのですから。
伝承を信用するのなら、それで諦めてくれるはずですから。
そして、次の瞬間。横たえられた四頭の魔獣たちが開いた異界へのゲートに消えて行く。
異界の風に包まれ、黒い闇に飲み込まれ。
右手を胸に。瞳は、自らが送り出す存在から離す事なく、その一部始終を見つめる俺と、その俺の様を見つめるタバサ。
生命で有る以上、俺は他者の生命を奪う事でしか生きて行く術を知りません。故に、自ら奪った生命に関しては、俺は全てを覚えていたいと思っています。
例え、それが自らの生命を奪おうとした存在で有ったとしても、その全てを。
全ての儀式を終えた後、普段通りの少しいい加減な雰囲気に戻した俺が、タバサに視線を移す。
タバサ自身も俺の方を物言いたげに見つめる。
……それに、彼女が問いたい内容は、何となく判りますが。
「これが今、俺が使える次元孔を開く仙術と言う事やな」
但し、今の俺では次元孔を開く事しか出来ないのも事実。この能力では、いくら才人が望んだとしても、彼を元の世界に確実に戻してやる事は出来ません。
俺自身が元の世界に道を開いた心算でも、それは確実では有りません。まして、平行世界とは、人間が考え付く限り無限に存在している物。確実に元々住んで居た世界に向けての次元孔を開く事など、今の俺には無理。
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