第3章 白き浮遊島(うきしま)
第28話 ラグナロク?
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傷痕ならば、ここが毒を含む膿が着いた場所です。それ故に即時に、しかも完全に回復させるのは難しい可能性も有りますか。
「タバサ、有難う。もう、大丈夫や。その程度の傷痕なら問題ないと思うで」
治療中のタバサに対してそう告げながら、右手を開いたり閉じたりして見せる俺。それに、動かして見た感覚から言っても、何の問題もない雰囲気では有ります。
そもそも、未だ戦闘は続いているのは間違いない状態。階下からも、そして屋外からも戦闘中を思わせる響きが聞こえて来ていますから。まして、ティンダロスの猟犬をこのまま放置する訳には行きません。ヤツラには、少なくとも、この世界からは消えて貰う必要が有ります。
それも、出来るだけ早い段階で。
それに、右手に何らかの不都合が有ったのなら、この戦闘が終わった後にウィンディーネを召喚して調べて貰ったら良いだけの事です。おそらく、見た雰囲気、及び俺の曖昧な記憶の中に有る映像と比べてみても、この傷痕は、組織自体が壊死を起こした状態とは違うと思いますから。
俺の記憶が間違っていなければ、毒蛇や毒蜘蛛の毒に冒された部分が壊死する可能性も有ります。それ故、多少は警戒をしていたのですけど、壊死した状態とは少し違うような気もしますからね。
この残った傷痕に関しては。
しかし、一度、俺の方に視線を向けたタバサが少し首を横に振る。
そうして……。
「この傷はわたしを護る為に付けた傷痕」
……と、短く伝えて来た。普段通りの彼女に相応しい口調と声で。
だから、自らが治療するのが正当と言う事ですか。
少し神経質に成っているような気がしないでもないですが、それでもこの娘が優しい娘なのは判っていますし、今までも少し生真面目過ぎるような面も見せていましたから、こう言う反応を示す可能性も有りましたか。
「それなら、全ての戦闘行為が終わってから時間を取ってタバサに見て貰うから、今は応急処置だけで留めて置いてくれるか。もう実戦には支障が無さそうやから」
そもそも、俺の仕事は彼女を護る事。それに、あの舌による攻撃を見過ごして、彼女の顔に当たっていた時の方が被害は大きかったはずです。あの舌は、タバサの頭部直撃ルートだったのは間違いないですから。
そして、彼女の顔に二度と消える事のない傷痕が残るぐらいなら、俺の手首に傷痕が残る方が何倍もマシです。俺の気持ちの部分では。
俺のその言葉に、少し考える雰囲気のタバサ。そう言えば、普段はかなり冷静な雰囲気の彼女が、このティンダロスの猟犬との戦いの後には、少し冷静さを欠いていたような気もしますね。そんな、俺が少々傷付いたぐらいは、別にどうと言う事もないのですが。
そして、少しの逡巡の後、タバサが今度はそっと首肯いてくれる。
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