正体
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スが始まった日……」
ユイは目を伏せ、説明した。
「何が起きたかは私にも詳しくは解らないのですが、カーディナルが予定にない命令を私にしました。プレイヤーに対する干渉禁止……具体的な接触が許されない状況で、私はやむなくプレイヤーのメンタル状態のモニタリングを続けました」
予定のない命令、それは茅場晶彦が命令したことはこの中の誰もが理解した。そして、ユイは口をまた開く。
「状態は……最悪といっていいものでした。ほとんどのプレイヤーは恐怖、絶望、怒りといった負の感情に常時支配され、時として狂気に陥る人もいました。私はそんな人たちの心をずっと見て気ました。本来であればすぐにでもそのプレイヤーに接触して話を聞き、問題を解決しなければならない……しかしプレイヤーに接触することが出来ない。義務だけがあり権利のない矛盾した状況の中、私は徐々にエラーを蓄積され、崩壊しました……」
静かなダンジョン内にユイの細い声が流れる。ゲツガたちはその言葉を黙って聞いた。
「ある日、いつものようにモニターしていると、他のプレイヤーとは大きく異なるメンタルパラメータを持つ二人のプレイヤーに気付きました。その脳波パターンはそれまで採取したことのないものでした。喜び……安らぎ、他にもたくさん……。この感情はなんだろう、そう思い、私はその人たちをモニターし続けました。会話や行動に触れるたび、私の中に不思議な欲求が生まれました。そんなルーチンはなかったはずなのですが……。その人たちの近くに行きたい、直接、私と話して欲しい……。あの二人の近くにいたくて、私は毎日、二人の暮らすプレイヤーホームに近いコンソールで実体化し、さまよい続けました。その頃の私はかなり壊れてしまってたんだと思います……」
「それが、あの二十二層の森なの……?」
「はい、キリトさん、アスナさん……私、ずっとお二人に会いたかった…。森の中で……お二人を見かけたとき……うれしかったです。そのあとに、出会ったユキさん、ゲツガさんあなたたちとも会えてよかった……。おかしいですよね、そんなこと、思えるはずないのに……。私、ただのプログラムなのに……」
涙をいっぱい流し、口をつぐむ。アスナはそんな状態のユイに優しく声をかけた。
「ユイちゃん……あなたは……ほんとうのAIなのね。本物の知性を持った」
「私には……解りません……。私が、どうなってしまったのか……」
そして、今まで黙っていたキリトが一歩前に出て、言った。
「ユイはもう、システムに操られるだけのプログラムじゃない。だから、自分の望みを言葉に出来るはずだよ、ゲツガもそう思うだろ?」
「そうだな。キリトの言うように、ユイはシステムに操られるだけのプログラムじゃないんだ。俺からも言うぞ。ユイ、お前の
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