第二話 嫉妬その二十
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なってしまうのだった。
「ほら、鬼のお面ね」
「般若だったわよね」
「そう。それ」
「あの鬼のお面みたいな顔になってるの?今の私」
「何か。怖い顔よ」
愛子は愛実のその顔を見て言うのだった。
「そんな顔はね。よくないから」
「私。そうした顔になってるの」
「人の好き嫌いはどうしてもあるけれど憎んだり妬んだりしたらよくないから」
切実な顔でだ。愛子は語る。ここでも切実な顔だった。
「それが顔に出るとね」
「今の私の顔になるの」
「今は元の顔に戻ってるわ」
「そう、よかった」
「本当に気をつけてね。自分の顔は鏡でないと見られないの」
人の顔はいつも見ることができる。しかし自分の顔はいつも見られるという訳ではない。まさに鏡がなければなのだ。
「鏡はいつも見られるものじゃないわよね」
「うん、そうよね」
「けれど人はいつも見てるの」
愛子はこのことを愛実に強く話す。
「顔をね」
「私がいつも見てるみたいに」
「そうよ。人はいつも見ていてね」
「自分自身ではいつも見られないのね」
「そう。だから余計に気をつけてね」
愛実は強く話す。くどいまでに。
「そして嫌な顔は嫌な心を余計に増やすから」
「そうなの?」
「そう。嫌な心が嫌な顔に出て」
心はそのまま顔に出るというのだ。人間は四十になれば生き方が顔に出るというがそれは心が出るからだ。
「そしてその顔の嫌なものが心に戻るのよ」
「どうして戻るの?」
「それはお姉ちゃんにもまだよくわからないけれど」
だがそれでもだというのだ。
「戻るのよ。嫌な心はね」
「そうなの」
「だから何度も言うけれど気をつけて」
そう妹に言ってだ。そのうえでだった。
愛子は愛実にあらためて言った。
「何はともあれね。おめでとう」
「高校入学ね」
「この三年間を幸せなものにするのは愛実ちゃんよ」
「私自身がそうするのね」
「そうよ。だから頑張ってね」
「うん。そうするね」
笑顔で頷く愛実だった。そうした話をしてだ。
愛実はその高校生活をはじめた。心の中に様々な感情を抱いたままその一歩を踏み出したのである。いいものも悪いものも含めて抱いた心で。
第二話 完
2012・7・19
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