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八条学園怪異譚
第二話 嫉妬その十六

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「それはね」
「そうよね。だからね」
「友達も家族も大切にしないといけない」
「そうよ。わかったわね」
「うん。本当にね」
「わかってくれたらいいわ。それでね」
 姉は笑顔になってだ。妹にこうも言ってきた。
「お姉ちゃんも今はね」
「お姉ちゃんはって?」
「そう。私今付き合ってる人がいるけれど」
「あっ、あの人とどうなったの?」
「凄くいい感じよ。それでね」
 どうかとだ。愛実は笑顔で言うのだった。
「大学卒業したら。お互いにね」
「その時はどうするの?やっぱりあれ?」
「そう。結婚するの」
 そうするとだ。笑顔で言う愛子だった。
「そのつもりなの」
「そうなの。」じゃあお姉ちゃん結婚したら」
「そう。お家出るから」
 そうするというのだ。
「お店は愛実ちゃんが」
「そうなるのね」
「しっかりしてね」
 姉から妹への言葉だった。
「お料理もお掃除もね」
「お店のこと全部よね」
「お父さんとお母さんの後は愛実ちゃんだから」
「私がこのお店をしっかりとやっていくのね」
「このままいけば愛実ちゃんはお店を上手にやっていけるけれど」
「できるかな。私に」
「そう。出来るから」
 こう答える姉だった。妹に対して。
「安心して。けれど油断しないで」
「努力して?」
「そうしてお店をちゃんとやっていってね」
「私にできたらいいけれど」
 こうしたことにもだった。愛実は顔を俯けさせてそのうえで言うのだった。
「お店。お父さんとお母さんのお店が」
「このお店も長いからね」
「そうよね。戦争前からあるから」
「明治の頃からよ」
 それからだというのだ。
「このお店があるのはね」
「そうだったわよね。ええと。ひいひいお祖父ちゃんの頃からよね」
「日露戦争の頃からあったっていうけれど」
 この戦争に勝ったことは大きかった。日本にとっては。
「このお店って」
「第二次世界大戦の時もね」
 今の日本で戦争といえばこの戦争になる。それだけ大きな意味のある戦争であることは確かである。
「お店は空襲で焼けたけれど」
「それでもよね」
「そう。もう一度建てて」
 そうしてだというのだ。
「今こうしてあるからね」
「その時代はお祖父ちゃんだったわよね」
「お祖父ちゃんは若くて。戦争に行ってて」
「そうそう。台湾に行ってたのよね」
「お祖母ちゃんがいてお祖父ちゃんが帰ってくるまで必死に守ってたのよ」
 そうしていたというのだ。
「そうして。皆が守ってきたお店をね」
「私がやっていくのね」
「頼むわね」
 このうえなく優しい笑みでだ。愛子は愛実に告げた。
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