第十六話 柴犬その五
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「あれで」
「そうそう、それで匂いもね」
「お味噌とか香辛料を沢山使って消さないと食べにくいですよ」
愛実は食堂の娘としてこう言った。
「猪も鹿も」
「そうなのよね」
「鴨にしても」
愛実の家では鴨は出さないが食べたことがあるので言えた。
「やっぱり野生ですと」
「鴨は鶏肉を濃くしたみたいな味だけれどね」
先輩はこの肉の味も知っている。当然愛実達もだ。
「燻製とかお鍋とか美味しいけれど」
「合鴨や家鴨はともかく野生ですと匂いがしますから」
「ううん、野生だとどうしてもなのね」
「はい、烏もです」
信州では烏を食べる。愛実はこのことも知っているのだ。
「野生ですと匂いがしますから」
「だから狐や狸もね」
「食べないんですね」
「捕まえて動物園に入れることになってるわ」
この学園の中にある八条動物園のことだ。
「あそこにね」
「そういえばあの動物園狐や狸多いですよね」
聖花はこのことを思い出した。
「色々な動物がいますけれど」
「何でも理事長さんがお好きなのよ」
「狐や狸をですか」
「そうなの。犬がお好きらしくて」
狐も狸もイヌ科であるのは先程話された通りだ。
「だから狼も多いでしょ」
「動物園とは別に犬猫ランドもありますね」
「そう。それで捕まえた狐や狸は保護してね」
それでだというのだ。
「動物園で飼うらしいのよ」
「そうなってるんですか」
「みたいね。鼬とかでもそうするみたいよ」
「鼬でもですか」
「動物を無闇に殺すのはよくないからね」
つまり動物愛護の精神を大事にしようというのだ。何故ならそうした動物達も人間と同じく生きているからである。
「だからね。それにどうも狐も狸もね」
「どっちもですか?」
「そう。農作物は荒らさないらしいから」
先輩は聖花に話した。
「鶏を襲ったりもしないし」
「ただいるだけなんですか」
「食堂から厚揚げとかきつねうどん用の薄揚げはなくなるらしいけれど」
「?それって」
「まさか」
ここで聖花も愛実もわかった。農作物や鶏ではなく揚げを食べるとなると。
それで二人で顔を見合わせてこう言い合った。
「そういえばいるわね。宴会の時とか博士の研究室に」
「どっちもね」
「それじゃあまさか」
「そういった狐や狸かしら」
「どうしたの、急に二人でお話して」
先輩はお互いで話をしだした二人に怪訝な顔で尋ねた。
「何かあったの?」
「あっ、特に」
「別にないです」
二人はそういった話は先輩には話さなかった。溶解の類の話なので話をしても信じてもらえないと思ったからだ。
それでこのことは隠してこうそれぞれ言った。
「ただ。揚げを盗むとかって」
「悪い奴がいますね」
「そうよね。私も揚げは好
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