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八条学園怪異譚
第十四話 茶道部の部室でその九
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「私ちょっと男の子達に言われたこともあるから」
「商業科の?」
「そう、同じ科のね」
 その黙っていても女の子が寄って来る、彼女が欲しい人間なら最高の環境である商業科の男子がわざわざだというのだ。
「自分のことを紹介してくれって」
「言われたの」
「そうなのよ」
「嘘、私って」
「愛実ちゃん本当に人気あるから」
 聖花は確かな顔で愛実に話す。
「女の子の間でも。奇麗好きでお料理もお裁縫も上手でしかも面倒見がいいって」
「そうなの」
「そうよ。知らなかったのね」
 聖花は目さえしばたかせていた。
「そのことは」
「うん、ちょっと」
「けれど本当のことだから」
「ううん、私って人気があったの」
 愛実は信じられないといった顔で俯いて言った。
「信じられないことだけれど」
「そうよ。それでその子と会ってみる?」
「どうしようかしら」
 愛実は俯いて言う。
「それは」
「まあよく考えてね」
「ええ」
「答えは今すぐ出さなくていいから」
「そうよね。じっくりと考えさせて」
「そうしてね。けれど今日はね」
 ここでこんなことも言う聖花だった。
「色々なことがわかったわね」
「あっ、それはね」
 愛実もこのことにはすぐに頷くことができた。
「確かにね」
「妖怪のことに」
 それに愛実の人気のこともだった。
「本当に色々わかったわ」
「ほっほっほ、知るというのはいいことじゃよ」
 博士も笑って言う。
「中には知らない方がいいこともあるがのう」
「それって何かスパイ小説みたいですけれど」
 愛実は博士の今の言葉にも突っ込みを入れた。
「そんなこと言ったら」
「そうじゃな。しかしそうした話もあるぞ」
「知ったら消されるとかですか」
「実際にあるからのう」 
 このことは人生論だった。
「長生きすれば色々とわかるぞ」
「ですか」
「うむ、そうじゃ」
「けれど私博士みたいに長生きはできないですから」
 とても百五十歳まで生きる自信はなかった。愛実は自分を仙人やそうした存在とも考えてはいない、普通の人間だと自覚しているのだ。
 それでこう言うのだった。
「とても」
「まあ普通は八十歳じゃな」
「それ位生きられたらいいですよ」
「そうよね。若くして死ぬ人もいるから」
 聖花詣でを組んで難しい顔で述べる。
「人それぞれでね」
「そうよね。三十代で癌とか」
「あるからね」
 二人にも心当たりのあることだった。
「三十代で癌になったらそれこそね」
「かなり危ないから」
「あっという間に進行して死んじゃうから」
「見つけたら終わりっていうのもね」
 あることだった。それが現実だ。
 だがぬらりひょんはここでこう言った。
「まあ妖怪には癌はないからのう」

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