第十二話 首なし馬その十六
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「あれっ、案外時間が」
「経ってないのね」
「ええ、あまりね」
こう愛実に答える。
「経ってないわ」
「何時なの?それで」
「八時よ」
聖花はその時間を愛実に正確に答えた。
「丁度よ」
「確かここに来たの七時だったわよね」
「ええ」
「思ったより時間経ってないわね」
「速いからな」
その理由は夜行さんが話す。
「それでだな」
「あっ、自転車もお馬さんも」
「だからですか」
「そうだ。この馬は一日に千里を走ることができる」
「そうだよ」
夜行さんだけでなく馬の頭も楽しそうに言ってくる。
「僕は赤兎馬並に走られるんだ」
「じゃあ同じだけ走られるこの自転車も」
「それだけ」
「そうだ」
その通りだとまた言う夜行さんだった。
「だから君達が思ったより時間は経ってないのだ」
「そうですか」
「そういう理由だったんですね」
「その通りだ。それでだが」98
夜行さんは二人にあらたあめて問うた。
「どうする」
「今丁度コースの三分の二位ですよね」
「その通りだ」
「ただ速いだけじゃなくて壁も通り抜けられてお水の上も進めますし」
このことも非常に大きいのは言うまでもない。
「それなら」
「そうよね」
聖花も愛実のその言葉に頷く。
「絶対に一時間もかからないし」
「じゃあいいわよね」
「ええ」
聖花はまた愛実の言葉に頷いた。
「ひょっとしたら泉が見付かるかも知れないし」
「そうしたのがね」
「泉だな。わしには見えないが」
妖怪である夜行さんには見えない、だがだというのだ。
「それでも君達には見えるだろうからな」
「はい、見回してみます」
「それで見付かればいいですし」
「それなら今日は」
「最後までご一緒させて下さい」
「そうしてくれると有り難い。だがそれが何処にあってどういったものかは誰も知らない」
あの博学の博士でもだ。それは一切知らなかった。
「しかしだ」
「それでもですね」
「ひょっとしたらですね」
「あるかも知れない」
はっきりしたことは言えなかった。これは本当にだ。
「しかし探してみるに越したことはない」
「そうですね。それじゃあ」
「今日は最後までお願いします」
二人は夜行さんと共に夜の学園の中を見回った。しかし結局何も見つかりはしなかった。この日はそれで終わった。
しかし得るものはあった。二人は夜の帰り道にこう話した。
「泉とかは見付からなかったけれど」
「そうよね」
聖花が愛実の言葉に応える。
「何か今日も楽しかったね」
「うん、夜行さんもいい人だったし」
「夜の学園をずっと見回したけれど」
実は学園全体を見回したのもこれがはじめてだ。
「色々と面白かったね」
「そうね。お昼とはまた
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