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八条学園怪異譚
第十二話 首なし馬その五
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「普通に思わない?」
「思わないわよ。というか完全に職業病じゃない」
 食堂の娘故に自然にそう思うからだ。愛実はまだ高校一年だがそれでも既にそれを持ってしまっているのだ。
 聖花にそれを指摘されてこう返す愛実だった。
「じゃあ願ったり適ったりよ」
「そこでそう言うの?」
「当たり前よ。私は生粋の食堂の娘よ」
 愛実は胸を張って聖花に答える。
「というかそれって聖花ちゃんもじゃない」
「パン屋の娘ってこと?」
「この前御飯食べてる時にお米からもパン作れるとか言ってたじゃない」
「だって本当のことだし」
「それに人参パンとか何かあれば絶対にパン言うでしょ」
「パン好きだから」
 聖花も自然に答える。
「普通に思うでしょ」
「ほら、やっぱりパン屋の娘さんじゃない」
「パン屋さんがパンに興味を持たないでどうするのよ」
「どうするって言われても」
「例えばカツカレー食べててもカツサンド考えるでしょ」
「いや、カツカレーのこと考えるわよ」
 愛実は食堂の娘として聖花に返す。
「普通に」
「だから。パンと挟んでもいけるって」
「それって職業病でしょ。私のこと言えないじゃない」
「そうかな」
「そうよ。結局聖花ちゃんもまずパンじゃない」
 愛実は聖花に対して言った。
「私は食堂のメニューで」
「一緒だっていうのね」
「というか何処までパン屋さんなのよ」
「愛実ちゃんだって骨の髄まで食堂じゃない」
「それでいいと思うけれど」
「私もよ」
 二人はカツカレーを食べながら言う。
「何かお互いにね」
「同じってことかしら」」
 こうした話をしてからだった。聖花はあらためて愛実に言った。
「それでね」
「うん、それで?」
「そのお馬さんだけれど」
「怪談と関係があるのね」
「夜になると乗馬部の厩舎から馬が出て来るらしいのよ」
「それが只の馬じゃないっていうのね」
「そう、幽霊か妖怪らしくて」
 ようやく本題に入ったといった感じの聖花だった。食べているカツカレーはかなり少なくなってきているがこれは愛実も同じだ。
「首がないのよ」
「首なし馬なの」
「そう、しかもその背中にはね」
 聖花はさらに言っていく。
「全身毛だらけの一つ目の妖怪が乗ってるらしいのよ」
「あれっ、何かその妖怪って」
 愛実はここまで聞いてふと気付いた。
「何処かで聞いたわ。首なし馬よね」
「そう、首がないのよ」98
「それって聞いたことあるわ」
 こう聖花に言うのである。
「何処かで。本で読んだのかしら」
「そうだったの、愛実ちゃん聞いたことあるの」
「私も知ってる位だから」 
 愛実はスープも飲みながら話していく。
「博士だったら絶対に知ってるわ」
「じゃあ博士に聞いてみる?」
「そう
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