第十一話 池の怪その十一
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「では仕方がないな」
「鬼さん達とやってくれない?」
「僕達とじゃ体格が違い過ぎるから」
「何なら大入道さんとかね」
「海に行って海坊主さんとやってもいいじゃない」
「では今度そうしようか」
うわばみは河童達の話を聞いて納得した素振りを見せた。
それで彼は静かになった、河童達は仲間のうちの一人をガジュマルの木のところに送りキジムナー達を呼んでそれからだった。
二つに分かれて相撲をはじめる。愛実と聖花はそれを見て日下部に尋ねた。
「あの、ここにありますか?」
「妖怪の出入り口が」
二人は泉をそうしたものだと認識して彼に尋ねたのだ。
「このお池の底とかに」
「ありますか?」
「いや、この池のことは知っているが」
日下部はその二人の問いにこう返した。
「そうしたものはない」
「ないんですか」
「ここには」
「そうだ、ない」
日下部は言い切る。
「この池の中にも入ったことがあるがだ」
「そういえば幽霊でお水の中にも自由に入られますね」
「それに息継ぎの必要もないですし」
幽霊なので呼吸なぞしない、実際に日下部の動きには呼吸めいたものはない。
「しかも日下部さん海軍ですし」
「泳ぐことも得意ですよね」
「かつて十六キロ泳いだこともある」
これは今の海上自衛隊幹部候補生学校でも行っている訓練である。
「泳ぐことは叩き込まれる」
「海軍だからですね」
「そうなりますよね」
「当然のこととしてそうなる」
このことはもう言うまでもないというのだ。
「しかも実体がないだけに生きていた頃よりもだ」
「泳げますね、やっぱり」
「そうなりますね」
「しかも濡れることもない」
泳ぐにあたっては好条件が揃っている。
「だから中に入ってみたが」
「そういうのはないですか」
「泉とか出入り口みたいなのは」
「なかった」
日下部はまた二人に答えた。
「河童達がいる洞穴があるだけだ」
「河童さん達ってそこに住んでるんですね」
「洞穴の中に」
「そこに家具、彼等が作った石のそれで住んでいる」
そうしているというのだ。二人は河童の生活もわかってきた。
「そして胡瓜や魚を主に食べて暮らしている」
「あとお酒もですね」
「かなり好きなんですね」
「河童は日本酒党だ。あと洞穴の中はビーバーの巣の様になっていてその部分には水がない」
そうなっているというのだ。
「通気も整っているし冬は暖かく夏は涼しい様だ」
「ううん、意外と快適なんですね」
「河童の生活って」
二人はそのことを知り納得した様な顔で頷く。
「何か色々勉強になりました」
「河童もいつも水の中にいるんじゃないんですね」
「陸に上がった河童という言葉があるが」
日下部はこの言葉をあえて出した。
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