第十一話 池の怪その八
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「やったことないし」
「そういうのは」
「あれっ、相撲嫌い?」
「嫌いとかそういうのじゃなくて」
「したことないから」
だからだというのだ。
「悪いけれどね」
「できないから」
「何だ、じゃあ仕方ないね」
それならと残念な顔で言う河童だった。
しかしそれで諦めるのでなく彼は今度は日下部に顔をム向けてそのうえでこう彼に言ったのだった。
「日下部さんはどうかな」
「私か」
「元々海軍で身体鍛えてるよね」
「それはその通りだが」
しかし彼もだが、と言うのだった。
「私には実体がない」
「あっ、幽霊だったね」
「だから私も無理だが」
「そうだね。じゃあ仕方ないね」
河童も彼の言葉を聞いて頷く。
「日下部さんもね」
「できればしたがな」
「日下部さん強かったの?相撲は」
「海軍ではよくやった」
身体を鍛える為であるのは言うまでもない。戦前の日本は今よりも相撲が盛んだったのだ。
「武道自体もだ」
「だよね」
「特に私は剣道が好きだった」
「刀だね」
「そうだ。海上自衛隊でもよくやった」
「成程ね。そうだったんだね」
「だがそれも昔の話だ」
実体があった頃だというのだ。
「今ではない」
「そうだね。じゃあどうしようかな」
「わしとせぬか?」
河童の後ろにある池から何かが出て来た。それは何かというと。
巨大な蛇だった。十メートルはあろうかというそれが出て来てそのうえで河童にこう言ってきたのである。
「わしも相撲は好きだからな」
「ああ、うわばみさんいたんだ」
「うむ、今宵はここにいる」
うわばみは自分の方を振り向いた河童に答える。河童も三人も優に上回る大きさだがそれでも全身ではなく池の中にまだかなりある。
その巨体で河童を見下ろしながらこう言うのだった。
「少し水遊びがしたくてな」
「それでなんだ」
「そうだ。そして相撲のことだが」
「ひょっとしてうわばみさんが?」
「それでいいか。女の子に相撲というのもだ」
うわばみが河童に言うのはこのことだった。
「あまりよくはない」
「そうなるんだね」
「それならわしとしようではないか」
うわばみは河童を見下ろしながら言う。
「どうだ」
「それはいいんだけれどね」
何故か河童は難しい顔でその水かきがある手で腕を組んでうわばみに言うのだった。
「ただね。うわばみさんってね」
「わしに何かあるか」
「うわばみさんが勝ったら何が欲しいの?」
「わしの欲しいものか」
「うん、それは何かな」
「そんなものは決まっている」
うわばみは堂々とした口調で河童に対して告げる。
「わしはうわばみだぞ」
「そうだよね、やっぱり」
「うわばみは酒だ」
酒の代名詞にもなっている。それなら当
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