プレリュードその十五
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二人で何度も何度も全部の歌を書いてやがて二人共どの歌も口図さめるまでになった。そうなればもう楽なものだった。二人は百人一首の名人にまでなった。
それで正月等にやってもクラスの誰にも負けなくなった。家族の間でもだ。
そのことについてだ。愛実は聖花に笑顔でこう言った。
「全部聖花ちゃんのお陰だよ」
「何で私のお陰なの?」
「だって。私達書いて覚えたじゃない」
言うのはこのことだった。
「だからね。聖花ちゃんのお陰だよ」
「私がお兄ちゃん達に言われたことを愛実ちゃんに教えたから?」
「そう。それで二人で書いて覚えたから」
「それはそうだけれど」
「だから聖花ちゃんのお陰だから」
満面の笑顔で聖花に告げる。
「そうなるよ」
「けれど覚えたのは愛実ちゃんだよ」
「私が?」
「そう。私も覚えたけれどね」
愛実もまただというのだ。
「愛実ちゃんも自分で書いたでしょ」
「それはそうだけれど」
「だからね」
聖花はにこりと笑って愛実に話す。二人でその百人一首をしながら。
「私のお陰とかはないから」
「そうなのね」
「だからね。お互いに気にせずにしよう」
「百人一首を?」
「そう。楽しくね」
こう言ってだ。聖花は百人一首をしていく。歌を詠むのは愛実の姉である愛子だ。
その愛子の歌を詠むのを聴いてだ。それで札を撮っていた。
その愛実の姉を見てだ。聖花は言った。
「何時見ても愛実ちゃんのお姉ちゃんって」
「凄く可愛いでしょ」
「美人よね」
聖花は彼女のその顔を見て惚れ惚れとさえなっていた。
「本当に」
「私はブスだけれどね」
愛実は自分ではそう思っていた。だが、だった。
姉、自分の姉についてはこう言うのだった。満面の笑顔で。
「お姉ちゃんは凄く奇麗だから」
「お姉ちゃん大好きなのね」
「うん、お姉ちゃん大好き」
その姉の前での言葉だ。
「お姉ちゃん最高よ」
「ちょっと愛実ちゃん」
その愛子が妹の言葉に歌を詠むのを止めて苦笑いで応える。
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