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八条学園怪異譚
第九話 職員室前の鏡その十五
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ている」
 あの博士ならというのだ。
「だから聞いてみるといい」
「ううんと。じゃあ今度はね」
「そうよね」
 愛実と聖花は二人で顔を見合わせて話す。
「大学のあの博士のところに行こう」
「それで聞いてみようね」
「その方がいい。とにかくだ」
 日下部はその二人にさらに話す。
「自分で調べることも大事だがな」
「知っている人に聞くこともですね」
「そのこともいいんですね」
「そういうことだ。私が知っていることは話せるがだ」
 それでもだというのだ。
「知らないことは話せないからな」
「知ったかぶりとかはされないんですか」
「それは何にもならないからな」
 愛実にもこう答える、
「私はしない」
「そうなんですか」
「知らないことを知っていると言ってもそれは虚栄でしかない」
 日下部はその虚栄というものに対しては肯定しない顔を見せている。そのうえで愛実、そして聖花に対してこう言ったのだった。
「虚栄は偽りのものでしかないからだ」
「偽りは、ですか」
「それは何でもない」
 形がない、そうしたものだというのだ。
「だから私は真実を言うようにしている」
「若し海軍や海上自衛隊で偽りを言えば」
 聖花が言う。
「あまりいいことじゃないですね」
「その通りだ。それは敗戦につながる」
 そうなるというのだ。
「軍隊では真実のみが貴ばれるのだ」
「そうですよね。戦争に勝つ為には」
「それが大事になりますね」
「その通りだ。戦争に勝つには真実のみが必要なのだ」
「ですよね。軍隊にいれば」
「そうなりますね」
「その通りだ。だから私は虚栄なぞは認めない」
 それも全くだというのだ。そうした話をしながらだった。
 三人は小川の出口に来た。そこで日下部は二人に言った。
「ではまた何かあればな」
「はい、お願いします」
「その時にまた」
 二人も日下部に対して応える。こうして別れの挨拶をして日下部は水産科の校舎に、愛実と聖花はそれぞれの家に帰った。それでこの日はこれで終わりまた別の話になるのだった。


第九話   完


                   2012・9・14
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