第九話 職員室前の鏡その五
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「怖いなんてものじゃないから」
「確かに。鏡の向こうの世界って」
「魔界とかだったらね」
「地獄かも知れないわよね」
「地獄なんて生きたくないわよね」
「行きたい人いないでしょ」
聖花はかるたを取りに左手を横に素早く動かした。しかしその前に愛実の手が一瞬早くその札を取っていた。
愛実はその札を取ってからこう言うのだった。
「そうよね、やっぱり」
「ええ。魔界もね」
「誰でもそうよね」
「そう思うわ。それにしてもね」
「速かった?今の」
「愛実ちゃん最近特に腕あげてない?」
話題はかるたのものにもなる。二人の部活のことに。
「今の見えなかったわよ」
「そうかしら」
「動きに無駄がなくなったっていうか」
それで速くなったのではないかというのだ。
「それに迷いがなくなって」
「迷い、ね」
「そう。そんな感じだけれど」
こう愛実に言うのだった。
「やっぱりそれって」
「心が晴れたからかしら」
「それでだと思うわ」
「そうよね。入学してから暫くね」
どうだったかというのは愛実自身が最もよくわかっていた。
「嫌な気持ちだったから」
「それが変わったわよね」
「ええ、やっとね」
そうなったっと聖花に答える。
「誰かを妬んだりしていると嫌な気持ちになるから」
「私もそうだったわ」
「けれどそれがなくなったから」
それでだというのだ。
「多分そのせいよね」
「そうよね。愛実ちゃん最近ね」
「最近って?」
「先輩が言ってたらしいのよ」
こうしたまた聞きだがだというのだ。
「愛実ちゃんを大会に出そうかってね」
「えっ、大会?」
「そう、学園内のだけれどね」
八条学園は高等部だけでも複数の学科がある.二人が通っている商業科もまたその一つである。
「普通科、商業科、工業科、農業科にね」
「水産科と看護学科よね」
「そのそれぞれで開かれる大会だけれどね」
それにどうかというのだ。
「出てもらおうかってね」
「そんな話になってるの」
「そう。凄いよね」
「ううん、一年の一学期でって」
本当に入学したばかりだがそれでも大会に出てもらう、愛実にとっては想像もしていなかったことだった。
それで信じられないという顔で聖花に顔を向けて尋ねた。
「信じられないけれど」
「そうよね。私もちらってお話聞いてね」
「信じられなかったのね」
「うん。一年の娘で愛実ちゃんだけよ」
「高等部の対抗大会に出られるのは」
「そう、だから若し出られたら」
「ええ、頑張るわ」
そうするとだ。愛実は聖花に真剣な顔で頷いて応えた。
「全力を尽くすわ」
「ベストをよね」
「やるからにはね。正々堂々としてね」
「卑怯未練はかるたには禁物よね」
「昔からね」
か
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