第七話 魚の目その二
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「そうだったの?」
「目って?」
「だからお魚の目」
愛実が今言うのはそこだった。見れば秋刀魚の上の面の目はなかった。既に幾分か食べられているが目もなくなっていたのだ。
それを聖花に言う。すると聖花はこう愛実に答えた。
「私お魚の目は食べないわよ」
「えっ、けれど実際に」
「実際に?」
「お魚の目ないから」
愛実は聖花にこのことを指摘する。確かにその秋刀魚の目はない。愛実はその空洞になった目を見て言うのだ。
「食べてないとしたら」
「何処かに落ちたとか?」
「とにかく食べてないのね」
「お魚の目って美味しいっていうけれど」
聖花は首を捻りながら愛実に話す。
「それでもね」
「それだけでは食べないとか?」
「ええ、ちょっとね」
そうだというのだ。
「というかお魚の頭自体をね」
「食べないのね」
「普通は食べないんじゃないの?」
「それは私もだけれど」
聖花も愛実も魚の頭は食べない。子供の頃からだ。
「身体にいいっていうけれどね」
「何か。お魚の頭を食べるって」
それはどうかと言う聖花だった。
「怖くない?」
「それはね。私も何か」
「でしょ?だから食べないけれど」
「私も。言われてみれば」
「それでなのよ。だから目もね」
「食べないのね」
「ええ、食べないわ」
実際にこう答える聖花だった。そして箸で秋刀魚をひっくり返す。片方は食べ終えたのでもう片方をというのだ。
適度に焦げ目がある如何にも美味そうなよく焼けた秋刀魚だ。こちらの面はというと。
「目、あるわね」
「そうね。あるわね」
聖花は愛実の言葉に応えた。確かにこちらには目があった。
「ちゃんとね」
「片方だけないのね」
「ううん、聖花ちゃんやっぱり目は食べないわよね」
「ええ、さっきから言ってるけれどね」
食べないというのだ。
「気持ち悪いから」
「そうよね。それでこっちはあるけれど」
「たまたまじゃないかしら」
聖花は首を捻りながら愛実に話した。
「これって」
「たまたまなのね」
「そうじゃないの?それでね」
「それで?」
「実は私お魚も好きなのよ」
愛実は微笑みになってこう話した。
「明日はそれにしようかしら」
「秋刀魚定食ね」
「秋刀魚じゃなくても鮭も鯖もあるし」
「何か朝御飯みたいね」
朝に鮭や鯖は結構あるおかずだからだ。鯖の場合は昨日の夜のおかずの残りであることが多いにしてもだ。
「それって」
「そうね。確かにね」
愛実も聖花のその言葉に頷く。
「朝のおかずね」
「そうよね。けれど愛実ちゃんって」
「定食屋だからお魚の定食もよく注文されるのよ」
「それでなのね」
「お家でもよく食べるから」
だから好きになったというのだ。
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