第3章 白き浮遊島(うきしま)
第27話 ティンダロスの猟犬
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この台詞を告げる俺。
俺に取っては、普通の台詞。但し、おそらく、この世界の貴族に取っては異端の台詞を。
「俺とタバサは街の外にこの骸を運んで、そこで弔いを行うから、ラウル達は他の集まって来る傭兵たちと協議をして、女神の杵亭の護りを固めて置いて欲しい」
☆★☆★☆
ラ・ロシェールの街外れで、何者かに操られて俺達を襲い、返り討ちに有った不幸な犬たちを火葬にし、そして鎮魂の笛を吹き終え女神の杵亭に戻って来た時には、既に夕やみ迫る時間帯と成っていました。
……と言っても、未だ夕食と言う訳には行かないのですよね。未だ色々と仕事が有りますから。
尚、俺が犬たちの弔いを行うと告げた言葉に、巨漢の傭兵ラウルがひとつ大きく首肯いた後、ボディー・ビルダー風の爽やかな笑顔を俺に見せたのですが……。何故か、俺の方には暑苦しさが増しただけでした。
ただ、あのやり取りの結果は、俺の対応は合格だったと言う事なのでしょう。
それで、宿屋に帰って来てから、キュルケ達に対して挨拶を行うのも適当に流して、最初に入浴。当然、俺の方の入浴の意味は、纏わりついた死の穢れを落とすのと、返しの風を受けた傷の治療。更に、犬を斬った時に浴びた返り血や涎などを洗い流す意味も有ります。
ウィルスや、寄生虫を洗い流さなければ成りませんから。
確かに、そう気にする必要もないとは思うのですが、警戒だけはして置いた方が良いですから。
狂犬病にしても、エキノコックスにしても、潜伏期間がそれなりに有る病ですが、魔法の中には、体内に侵入したウィルスや病原菌の活動を活発にする類の魔法も存在しますから。
まして、当然のように、邪仙術の中にもそう言う仙術は存在しています。
そして、これでようやくタバサを伴って宿屋の一階部分に有る酒場に赴き、その後に夕食に有り着く事が出来るように成った、と言う事です。
但し……。
今日も長い一日だったけど、これで終わった訳では有りません。少なくとも、全ての行程が終了して魔法学院のタバサの部屋に帰りついた時が、今回のルイズ一行の護衛任務の終了する瞬間。未だ、気を抜くのは早いでしょう。
ほら、良く言うでしょう。家に帰り着くまでが遠足だと。
「タバサ、シノブ。今日は一日、御苦労さま」
俺とタバサが宿に戻って来た時には、既にやり始めていたキュルケが、改めて身支度を整えた後に酒場に姿を見せた俺とタバサに対して、そう話し掛けて来てくれた。
「御苦労さまと言われるほどの仕事をして来た訳でもないけど、そう言われると、少し嬉しいな」
一応、そう軽口で応対する俺。尚、俺の蒼い御主人様は、キュルケのその台詞に対して、軽く首肯く事でのみ答えと為した。
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