第三話 人はそれを平穏と言うのだろう
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とんでもない事をサラッと言う月日。だがその言葉が嘘ではないように、引き金にかかる指に力が入り、撃鉄がわずかに動いた。
「………じょ、冗談だよ、ジョーダン! 我だって時と場所くらい考えるさ。………アハハハハ」
鷹見は必死だった。説得力のない言い訳をするのに必死だった。目が笑っていない。こういう時の月日は本気(マジ)である。真剣(マジ)でやりかねない。
いや、殺る。間違いなく。
「口は災いのもとだ。気を付けろよ…」
「お、おう……」
月日はリボルバーをポケットに収める。
命拾いしたと鷹見は大きく息を吐いた。同時に気温が下がったのに気が付いた。
「あれ、これって」
「ついでだ」
月日はそのまま歩き出す。彼が離れると、鷹見の周囲は本来の気温に戻る。
慌てて月日を追い、その傍らまで近寄ると、再び気温が下がったように感じる。
「本当に便利だよな。お前の能力って」
「我もそっちの方が良かったぜ……」とぼやく鷹見。月日からすれば「お前も十分すごいと思うがな……」と鷹見の能力に関しては、一応認めてはいるらしい。
そう、この現象は月日の能力によるもの。
月日の能力は『大気操作(アクセルエア)』。風力操作系の能力であり、大気に存在する物を生成・化合ができ、気流まで操る。
その他にもできる事は多々あるが、日常生活で役立つ事は滅多にない。
月日自身あまり能力や大能力者(レベル4)であると自慢する事はない。
それは、その道がどれだけ過酷なものかを誰よりも知っているつもりだからだ。
「鷹見の能力だって“まともな”使い方してれば文句ないんだが……」
「何を言う、失礼な。我はいつだって、まともに使って――――」
「あ、約一五〇メートル先で女の子のスカートが風で盛大に捲れt―――」
―――ピキィン!
「射程内だッ!!」
鷹見は声を上げ、集中力を高めていく。
彼の目に映る世界がズームアップして、目標を捕らえた。
これが鷹見の能力、『千里透視(ロングレンジ)』。簡単に言えば望遠鏡人間である。異能力者(レベル2)である現時点では、二五〇メートル先まで望遠できる。まさに射程内だ。
皮肉にも、レベルが上がれば遮蔽物を無視して望遠できるとされている。
この時月日は、三歩離れた所で靴紐を結び直すフリをしていた。
要するに、他人のフリである。
そんな事はお構い無しに、鷹見は目標を視界に収めていた。
「ヒャァァァーーホォォッ!! 今時珍しいイチゴ柄。さて、どんな娘が穿いて――――」
その顔を拝もうと視線を上げた時、
「ギャァァーー!!! 目が……目がぁぁッ!!!」
歓喜
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