第三話 人はそれを平穏と言うのだろう
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きた出来事は小石につまずいた程度で処理されかねない。
実際にはもう処理されていなるのだが、知らぬが仏と言うので………。
そんな事を知るよしもない青年は月日へと駆け寄る。
「おい、待て月日!」
そこでようやく月日は振り向き、
「ん? おぉ、鷹見(たかみ)。おはよ〜さん」
月日は“たった今”やって来た、鷹見に挨拶をした。
眩しい程の笑顔と共に。
「うお! なんて眩しい笑顔…。これが、数々の女を虜にしたというキラースマイルか!―――――――じゃねーよッ!!」
「何だよ朝っぱらから」
ギャーギャー喚くこの青年、鷹見行方(たかみゆくえ)は良く言っても悪友であり、悪く言えば変態である。
その証拠に白Yシャツを直に着ている。しかも前面を全開にしている。
これ以上言うこともあるまい。この男は、変態である。
そんな悪友に月日は心底面倒臭そうにする。ここで気絶させてゴミ捨て場に放置してやろうとも考えたが、それでは作業員の方の迷惑になるだろうと今は実行しない事にした。
―――――――――
それから二人は共に歩き出した。
鷹見は先程の出来事について月日を問い詰めていた。
「大体よぉ。清々しい朝に、清々しく挨拶をしてくる親友(※自称)に、問答無用男女平等顔面爆砕拳をぶっ放す奴がどこにいるよ!?」
「え? 俺はてっきり、新手のガチホモストーカーが襲ってきたのかと」
真顔でものすごく真面目に答えた月日。「それに親友? 笑えないな」と鼻で笑った。
「月日………お前ェ」
その答えを聞いてプルプルと震える鷹見。
それが爆発した。
「我(おれ)がガチホモ? 否! 男好き? 否ッ!!」
そして、彼は天に向かって吠えた。
「我は! お姉様が!! 大・好・きだぁぁ〜〜ああッ!!!」
その瞬間。世界を静寂が支配した。
七日間という短命であり、命を賭して鳴き続けていた蝉すら、鳴く事を放棄した。
「OK.やっぱりゴミ捨て場行き決定な?」
どうやら本人はゴミ捨て場を所望しているようだ。
なら期待には答えなくてはなと月日は指を鳴らす。
舞い上がっている本人は全く気付いていない。
「あの時の今よ、さようなら。今日の今よ、こんにちは。この救われぬ者に安らかなる眠りを……」
このまま鷹見を放置しておくのは精神的な意味でよろしくない。
(この変態(ばか)を何とかするのは、俺の役目だよな…)
“親友”だしと、月日は呟いた。
―――――グシャッ!!
こうして、世界は音を取り戻した。
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