第一章 グレンダン編
天剣授受者
日常とは常に面白いものである
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手に結び、閉めようとする。シキへの遠慮などそこにはない。
シキは器用に体を滑り込ませ、窓から外に飛び出した。
エアフィルターの外はまさに地獄だ。人は生きて行けず、死んでいくしかない。
そんな少しのミスが即座に死に直結する場所に、シキはいた。
シキの目の前には大量の汚染獣の子供、通称『幼生体』が一心不乱にグレンダンに向けて突撃していた。最弱の汚染獣と呼ばれているが、質よりも量で来るので苦戦をする相手だ。
そう普通の武芸者なら苦戦をする。だがシキは普通ではなかった。
「レストレーション03」
シキは腰に巻きつけてある錬金鋼の一つを、両手の甲のスリットに差し込み復元する。それは光り輝き、手袋の形を取る。
シキは即座に手袋から鋼糸を展開する。その数、およそ二百。
シキがいる場所にはほかには武芸者はいない。シキただ一人で戦っている。
小さなシキと幼生体の大群は、蟻が象に挑むように見える。だがシキは動かない。
幼生体はシキを引きつぶし、背後にある食料を貪ろうと必死に突撃をする。既に三日以上食べていないのだ。彼らの食欲は限界に来ていた。だが、彼らはその食欲を満たすことはない。彼らの命は尽きていたからだ。
「柔らかいなぁ、やっぱ」
シキの目の前では岩と岩にくくりつけた鋼糸を通過し、バラバラになる幼生体が見えた。シキの剄力ならば、多少強引な方法で切れ味を上げることができる。莫大な剄力の持ち主であるシキだからできる方法であり、多少ムラもある。
グレンダンに襲いかかったのは五千にも及ぶ、幼生体の群れ。幸い、その母体は活動を停止しているらしいが周囲には雄性体が複数いるらしい。普通の都市ならば、総力戦に匹敵するほどの戦いだが、グレンダンでは普通だ。
だが、シキは油断はしない。戦場での油断は即、死につながる。
触れただけでも死ぬ物質が充満する空間、そして防護服を易易と切り裂く汚染獣がいる空間だ。格下の相手でも油断などしてはいけない。そしてシキの敵はもう一つある、自身の剄だ。
莫大すぎる剄は扱いきれなければ、自身の防護服を破壊する。
カウンティア・ヴァルモン・ファーネスという天剣授受者もいるが、彼女は加減というものがとても下手だ、いやいっそできないと言ったほうがいい。彼女は莫大な剄を余すことなく使うため、防護服が10回以上技を放つと自壊する。
これはシキにも言える。シキの剄力はカウンティアも多く、全力を出したら防護服が完全に自壊する。実際、加減を間違えて防護服が自壊したことが過去、何度かあった。
「……レイフォンも戦ってるな」
シキは戦場に出ている、馴染み深い剄を感じてレイフォンの存在に気づく。
シキが孤児院に装備を取りに帰るとレイフォンは既にいなかったからだ。レイフォンも膨大な剄を持っているが、制御
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