第一章 グレンダン編
天剣授受者
日常とは常に面白いものである
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見る。一見、綺麗にしているように見えるが全くそんなことはない。ただ掃除機をかけたという事実に満足しただけだ。
リンテンスは煙草を吹かしてため息をついた。どうやら正解のようだ。
シキはため息をつきながら、窓を開けようとして……止めた。リンテンスの部屋の真下はゴミ捨て場で今日はゴミ捨ての日だ。開けた瞬間、悪臭が部屋に充満するだろう。
「引っ越や、このグータラ師匠。金があるんだから」
「……」
だんまりを決め込んだのか、リンテンスは何も言わずに煙草を吹かす。
シキは腰に手を開けて、真剣に考えて末、こう結論を終結させた。
「掃除するから出てけ、師匠」
シキはリンテンスを部屋から蹴り飛ばした。
三十分後、ピカピカになった部屋に満足したシキは外に蹴り出していたリンテンスを回収し、ソファーに投げ込む。
リンテンスの顔は普段より二割ほど不機嫌が増した顔になっていた。まぁ、シキはまったく気にしていないのだが。
「ドヤ!」
「……姿形だけじゃなく、性格も似てきたのか?」
ボソッとリンテンスはシキに聞こえないように呟く。
脳裏によぎったのはシキとまったく同じ顔の女性。自分の全力を力技で粉砕し、傷一つ付けられず負けた相手、そして現在もなおしつこく付きまとわれている相手だ。
一人だけでもめんどくさいのに二人に増えるなど悪夢でしかない。
「しかっし、侍女さんいなかったっけ? ほら、陛下から送られたっていう」
「辞めた」
またかとシキは天を仰ぐ。
リンテンスの顔は普通にしていても迫力がある、街のチンピラですら震え上がるほどに。本人にとっては基本なのだろうが、他人から見たら命を狙う暗殺者のごとく見えるだろう。
シキはリンテンスと出会って二年ほどだが、実は今でも怖いのは内緒である。
「ゴミはゴミ袋に入れて、ちゃんと分別するように。後、動かず鋼糸で何もかもやるのはやめろ」
シキは剄で強化した素手で、部屋に漂っている糸を掴む。
目に見えないほど極細の錬金鋼でできた糸、それがリンテンスの武器であり、シキが習っているものである。
シキは息をするように掴んでいるが、ただの武芸者が掴めば手が三枚に卸されるくらいの切れ味は保っている。
「……訓練はしているんだな」
「そりゃするだろ、こんな便利な武器」
シキは鋼糸を強引に引っ張り、リンテンスから引き剥がそうとする。
リンテンスは鋼糸に流している剄を強めてそれに対抗する。それを感じたシキは、ニヤリと笑いながら、さらに剄を高めようとした時……サイレンが鳴り響いた。
シキは鋼糸から手を離し、窓を全開にする。異臭が入ってくるが気にしない。久々の稼ぎ時だからだ。
「んじゃ、稼いでくるわ」
「あぁ、行ってこい」
厄介者をどかすような声をだしたリンテンスは鋼糸を窓の取っ
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