暁 〜小説投稿サイト〜
最期の祈り(Fate/Zero)
宴の終幕
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
「え?」
「そっか〜、藤村って言うんだ」
しかし、予想とは裏腹に彼は偽名を使った。
「ん?あれは……」
そんなシャルロットに気付かず、切嗣は目敏く丁度誰かを探しているような女性を見つけた。向こうも気付いたのか、此方に駆け寄ってくる。
「お母さん!」
「ユーリ!あぁ良かった……」
そう言うと、一つ深呼吸をし、改めて切嗣に向き直った。
「娘をありがとうございます」
「いえいえ。ユーリちゃんのお母さんが見つかって良かった」
そう言うと、ユーリを地面に降ろす。また、母親の手に繋がれたその子を見やりシャルロットは優しく注意を促す。
「もう、はぐれちゃ駄目だよ」
それは、彼女の心からの願い。
「うん!ありがとうね、おじちゃん、おねえちゃん!」
恐らく、彼女の一言が持つ意味をユーリが完全に推し量れたとは思えない。それでも是と返す。もう、この手は離さないと。
「もし、よろしければお名前を伺っても?」
「僕の名前はシャルロットって言います。」
「僕は、藤村」
やはりと言うか、またしても切嗣は偽名を名乗った。
「藤村さん……ですか。すみません、ちょっと最近有名になっていた日本の人と似ていて。確か、衛宮切嗣さんでしたっけ」
思わず息を呑むシャルロット。
「ええ、よく間違われるんですよ」
切嗣が偽名を名乗った一番の理由はこれだ。もし、シャルロットから足がついてシャルルに行き着くとすれば、それは他ならない「衛宮切嗣」としてのネームからだろう。
衛宮切嗣は男性のIS乗りである⇒隣にいる女性もISに関連しているのか?⇒そう言えばその子、シャルル・デュノアに似ているな⇒疑わしい
こういう図式が成立する。故に切嗣は最初の段階で疑われるファクターを消す。実に合理的な考えだ。合理的だが……
(ちょっと寂しいな)
その親子が去った後、シャルロットは切嗣の腕を抱いた。
「シャル?」
「……から」
衛宮切嗣の名前は絶対に否定させないから
しかし、祭りの歓声に掻き消され切嗣の耳には届かなかった。
ふと、何を思ったか、切嗣は空を見上げた。夕焼けが夜の闇に侵食され塗り潰される、その僅かな瞬間。その刹那的光景は耽美に過ぎ、切嗣の心を無性に感傷的にした。
――あぁ、祭りが終わる――
明日、二人はフランスを発つ。どうか、それまでの間、二人を阻むものがないように……
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ