宴の終幕
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嗣は子供の所に向かっていった。
「どうしたんだい?」
自分もしゃがみこみ、その子と同じ目線になって話しかけた。
「×××、×××!××……」
「え、あ……」
だが、悲しい事に切嗣は未だフランス語を日常会話程度に持っていったところ。泣きじゃくる子供の、未だ多少拙い訴えを聞き取る程には熟達していない。
「大丈夫だよ。そんなに泣かなくて」
しかし、近くに寄ってきたシャルロットは難無く、その嘆きを解し頭を撫でる。
「何て言ったんだい?」
「お母さんとはぐれてしまったんだって」
泣いている子を宥めながら、シャルロットは答える。
「ねえ、名前は何て言うの?」
「……ユーリ」
今度は聞き取れた。
「とりあえず立とう。こんな所で踞っていたら危ない」
そう言うと、切嗣はユーリを自分の首に跨がらした。
「え、あ……あの」
「とりあえず、こうすれば君のお母さんも見つかるだろう」
言いながら歩き始める切嗣。その隣を歩くように、側を行くシャルロット。
「何て言うか……切嗣って意外と子供の扱いに慣れているね」
人混みを掻き分けながら、シャルロットは思った事を口にする。
「まあね」
これでも家庭を持った身だ。小さいイリヤスフィールを抱きかかえ、父親として愛情を注いだ事があるのだ。扱いには手慣れている。
しかし、
「う……ひっく……」
ユーリが泣き止む陰が見えない。
「大丈夫だよ」
それを見かねてか、急に立ち止まる。
「切嗣?」
訝しげにシャルロットが問いかける。しかし、「まぁ、見てな」とでも言うように目線で応える。
一旦ユーリを地面に下ろし、ゆっくり喋りかける。
「大丈夫だから。ユーリのお母さんは絶対に見つかるから」
「ほんと?」
泣きべそになりながら、何とか顔を上げる。
「ああ、約束するよ」
「うん……ありがと、おじさん」
「おじさんは酷いな」
少し、困ったように笑う。それにつられてユーリの顔も笑いが戻ってくる。
「おじさんおじさん!」
「はいはい……それじゃあ、お母さんを探そうか」
「うん!ありがとう、おじさん」
さっきから「おじさん」と連呼され微妙に落ち込む切嗣をバックに、ユーリはシャルロットにも話しかける。
「お姉ちゃんもありがとう!」
「うん、どういたしまして。それと僕の事はシャルロットって呼んでね」
それから、三人は人を探し続けた。まぁ、その傍ら祭りもしっかり楽しんだが。切嗣の奢りで射的や金魚すくいを楽しみ、林檎飴を堪能しながら捜索は続いた。小一時間程経った頃、切嗣の頭の上に跨がりながらユーリは彼の名を尋ねた。
「そう言えばおじさんは名前、何て言うの?」
「僕かい?」
「うん!」
シャルロットは予測していた。彼は普通に自分の名前を明かすものだと。
「僕はね、藤村って言うんだ」
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