六話 過去の真相
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…」
「――ああ。さくらがアレに願った結果、生まれたモノだよ。いわば泡沫の幻想だ。源が消えればすべてなくなってしまう、さくらの抱いた儚い夢の結晶だ」
吹けばなくなってしまう。醒めれば消えてしまう。そんな儚い夢に縋ってしまうほどにさくらは孤独を恐れ、そして拒絶した。
「――」
年老いた顔をくしゃりと歪めて、純一はなにかをじっとこらえるように俯く。
「――悠二くん」
「なんだ?」
不意に表情が真剣なモノへと変じて、純一は悠二に声をかける。
「さくらを、あの馬鹿な義妹を頼んでもいいか?」
「――わかった。僕に出来ることはしよう」
僕でいいのか?何で僕なのか?などとそんなことは聞かない。
おそらく、この島で一番、さくらを知っているのは悠二だから。それを自分でわかっているからこそ、頷いた。
なんとかできる。等と大言壮語する気はない。だが、自分に出来る最大限は惜しまないと言った。
「すまない」
どこか、悔しそうな表情を浮かべて、純一は言った。
(あの馬鹿、どこが孤独だよ。こんなに心配してくれる兄がいるってのによ)
悠二には呆れるしかなった。
さくらは自分が思っているほど孤独なんかではない。一人なんかではない。そのことを、純一の表情から窺い知ることができる。
「――まったく、馬鹿な妹を持つと苦労するな、純一」
「ああ。まったくだよ」
*
「――不思議な子だったな」
桜公園を歩きながら一人ボソリと呟く。
あれから、悠二は眠いと顎が外れやしないかというほどの大あくびを掻き、家に帰っていった。
純一も帰ろうかともおもったが、少し桜公園を散歩していくことにした。
「――水無月悠二くん…か」
思い浮かべるのは先ほどまで自分が話していた金色の髪に青い瞳というさくらとよくにた外見をもち彼女と同じように外見とは裏腹に、大人びた性格とまるで老成した男のような落ち着いた雰囲気を持っている不思議な少年。
「――彼なら、さくらを救ってくれるかもしれないな」
『――兄さんはずいぶん、あの子を買っているんですね』
「かったるいことに、ワシじゃさくらはもうどうにも出来んからの」
少し寂しそうに笑う純一の隣にはいつのまにか、黄色のリボンのついた白い制服をきた少女が笑顔を浮かべて立っていた。この少女こそ、在りし日の朝倉音夢その人であった。
「…私も、もう死んで兄さんに憑いてる身ですからなにもできませんしね…」
そういって、音夢も苦笑する。
「大丈夫さ。悠二君なら」
「――そうですね。あの子と話しているさくらちゃん、まるで兄さんと話している時みたいでしたしね」
「――そうか?」
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