第3章 白き浮遊島(うきしま)
第26話 猟犬
[8/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
かなり感心したようにそう言った。
尚、彼について来ていた傭兵たちは、流石に、この赤く染まった凄惨な現場に近付くのを躊躇ったのか、少し遠巻きにして、俺達の事を見つめているだけで有りました。
……多分、俺とタバサが魔法使いで、それも、かなり実力を持った貴族だと判ったから、恐れられている訳でもないと思うのですが。
「偏在と言う、自らの分身を作り出す魔法を聞いた事は有ったが、実際に目にするのは初めてだ」
隣に立たれると、更に異様な圧迫感と言うか、威圧感と言うか、暑苦しさを感じさせるラウルが更に続けてそう言った。
そう言えば、タバサにもそう聞かれましたね。剪紙鬼兵とは偏在なのか、と。
尚、俺の使う剪紙鬼兵は、この世界の風の系統魔法が生み出す偏在とは質が違います。少なくとも、剪紙鬼兵に魔法は使用不能です。更に彼らの経験も俺にはフィード・バックする事は出来ません。
まして、能力が俺と剪紙鬼兵では違い過ぎますから。
剪紙鬼兵とは、孫悟空が自らの毛から生み出す子ザルのような存在。呪符に呪文を書き、それに俺の気を籠めただけの物。
但し、元が俺。つまり、龍種で、更に駆け出しの仙人ですから、ある程度の修練を積んだ剣士程度の能力は持っていますが、妖怪や邪仙の相手をするには、かなり実力が不足して居ます。
この世界の遍在に相当する仙術では、『飛霊』と言う仙術が有るのですが……。
これは、すべての経験も俺にフィード・バックする事が出来、更に、俺とほぼ同等の能力を行使する事が出来るのですが……。
全ての被害も俺にフィード・バックしてしまう仙術なんですよね、これは。つまり、『飛霊』が一撃で死亡するような被害を受けた場合、その被害がリアルタイムで俺にフィード・バックされてしまい……。
まぁ、強力な仙術には、それなりのリスクが有る、と言うことです。
「先ほども言ったけど、ラウル。危ないトコロを助けてくれて有難うな」
俺は、再び、そう感謝の言葉を伝える。
確かに、俺とタバサだけでも何とかなった可能性も有ります。……なのですが、だからと言って、感謝の言葉を告げないで良い理由には成らないでしょう。
「コイツらは、死病に冒された犬で、コイツらに噛まれる……いや、その涎からだけでも、その死病に冒される危険性が有ったんや」
大地に骸を晒す猛犬たちを、かなり哀しい瞳で見つめながら、俺はそう続けた。
それに、俺の曖昧な知識が正しいのならば、狂犬病は嘗められただけでも罹患する可能性が有ったと思います。
つまり、知識が無い相手なら、コイツらだけでも十分に暗殺を行う事が可能だったと言う事。そして、その見えない、ウィルスと言う暗殺者は未だ、この空間内に存在しています。
いや、もしかする
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ