第3章 白き浮遊島(うきしま)
第26話 猟犬
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して、今まさに俺達に向かって飛びかかろうとした猛犬たちを襲い、石畳に黒い痕跡と、そして物言わぬ骸を作り上げる。
斬り込んで行った剪紙鬼兵が残り二体。俺とタバサを護る者が四体。
そして、残りの猛犬の数は、六……いや、今、二頭の猛犬が剪紙鬼兵に斬り裂かれて、残りは四頭と成った。
その瞬間、数本の弓矢が後方より飛来し、残った犬たちをすべて射抜いて仕舞う。
「さっき、金の酒樽亭で雇った傭兵たち」
それまでと全く変わりがない口調で、そう事実のみを淡々と告げるタバサ。
但し、その言葉の中に、戦闘時の緊張した色は最早存在してはいない。
振り返った俺の瞳にも、先ほど、金の酒樽亭で安酒をやって居た巨漢の傭兵と彼に連れられた数人の傭兵たちの姿が映ったのだった。
もっとも、どう見ても、三十メートルほど離れているのですが、彼だけ、遠近感を無視した存在のように感じるんですけどね。
遠近感を無視したその巨漢の傭兵……。確か、ラウルとか名乗っていたな。……って言うか、本名はラウル・シャニュイ子爵とか言うオチではないのでしょかね。
仮面の男が関係していて、あの傭兵がラウル子爵なら、その仮面の男はファントムですよ。
もっとも、あの巨漢の傭兵は、オペラ座の怪人のラウル子爵と言う優男タイプと言うよりは、元ボディビルダーのハリウッドのアクションスターで、嗤うと並びの良い健康な白い歯がニッと光るタイプに思えるのですが。筋肉ムキムキの。
「助かりましたよ。少し、ヤバ目の状態でしたからね」
近寄って来るに従って、俺の遠近感が間違っていた訳では無く、コイツがデカ過ぎると言う事が確認された巨漢の男、ラウルに対して、感謝の言葉を告げて置く俺。
尚、倒されずに残った剪紙鬼兵はすべてカードに戻して回収して置きました。剪紙鬼兵用の呪符だって有限ですからね。回収出来る物は全て回収すべきですから。
そんな俺の言葉に、ボディビルダー独特の爽やかな笑顔で答えるラウル。おっと、コイツはボディビルダーではなしに、傭兵でしたか。
「そんな事を言う割には余裕が有ったように思えるけどな」
ラウルが俺とタバサの周りを一当たり見回してから、そう言った。俺達の周りには、三十近くの様々な姿の犬たちが、有るモノは血の海に沈み、またある者は雷を撃ち付けられて、無残な骸の姿を晒しているのだった。
確かに、この犬たちは何者かに操られた存在であったと思います。ただ、だからと言って、俺やタバサが殺されてやる訳にも行きません。俺やタバサは忍び寄る死の影を、自らの能力で振り払ったに過ぎないのですから。
「しかし、オマエさんら、トンでもない実力を持ったメイジだったんだな」
ついに、俺の真横にまで接近して来たラウルが、
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