第3章 白き浮遊島(うきしま)
第26話 猟犬
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と垂れ流される涎の中に有って、その白い牙だけが不気味にその存在感を誇示し続けるようで有った。
ずいっと、包囲の輪が狭められる。その距離が、十メートル弱から、八メートル……いや、七メートル以下にまで縮まる。コイツらは人間では無い。まして、猫科の大形の捕食獣と違い、イヌ科の連中は集団で狩りを行う存在。毛皮と言う防具と、牙と言う武器。そして、人間と比べて圧倒的な敏捷度。それに、リーダーの指示に従い集団で行動する戦闘集団。
まして、狂気に彩られたヤツラからは、死を恐れると言う、真っ当な生命体ならば持っているはずの本能の部分も感じる事は無い。
刹那、最初の一頭が飛びかかるのと、俺の右手が懐から何かを取り出してばら撒くのとではどちらの方が早かったで有ろうか?
剪紙鬼兵。俺の姿形を模した十体の分身達。
半数の剪紙鬼兵が俺とタバサの周りを護り、残りの半数が猛犬の間に、その手にした刀で斬りこんで行く。
最初の交錯で、簡単に一体の剪紙鬼兵が無効化される。それとほぼ同時に、俺の額に軽い裂傷が走った。
しかし、その貴重な一瞬の間にタバサの口訣が紡がれ、導引が結ばれた。
打ち据えられるは雷公の腕。森の乙女の得意とする雷撃のタバサ仕様。
一瞬の白光の後、地に転がる獣たち。
後方の一角を護りし猛犬たちが、一瞬の内に無力化された瞬間で有った。
しかし、その程度でヤツラに動揺も、そして揺らぎすらも感じさせる事はない。
元より、何者かに操られ、狂気と化した存在。
再び、俺とタバサを包囲していた猛犬たちの一角が突出。
上と左が同時に、そして、一瞬のタイムラグの後、更に右。
二頭の同時攻撃と、その二頭の攻撃が失敗したとしても、一瞬の後に残った一頭に因る攻撃で俺とタバサ。そのどちらか一人の喉笛をかみ切ろうと言う意図の元繰り出される必殺の攻撃で有った。
すっと半歩、タバサの前に出る俺。そんな俺の背に感じる彼女の存在。
彼女は、何の反応も示す事はない。但し、俺の背後に隠れて震えている少女でもない。
突如、俺の右手に顕われた七星の宝刀が優美な弧を描き、再びその鞘に納められるまで瞬きの間でしかなかった。
しかし!
そう、しかし。その一瞬の弧の後、跳び上がったはずの猛犬が、最初に跳んだ二頭がほぼ同時に、そして、それに続いた一頭が、その一瞬の後に、石畳と俺を、彼ら自身の赤い生命の証で色付けながら倒れ込み、空しく痙攣を続けた後、その活動を永遠に終了させる。
最初の二頭に関しては、空間を歪める事に因って放たれる剣圧により無力化。そして、残った一頭に関しては、直接、七星の宝刀に因って斬り裂いたのだ。
刹那、再び召喚される雷公の腕。その無慈悲にして苛烈な腕が、姿勢を低く
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