第3章 白き浮遊島(うきしま)
第26話 猟犬
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が。
それでも、何も手を打たないよりはマシですから。
「この契約内容に不満が無ければ、アンタの知り合いで信用出来る……昨日、白い仮面の男の口車に乗せられて山賊の振りをして隊商を襲おうとした連中ではない、信用出来る連中を雇用したいんやけど、どうやろうか?」
☆★☆★☆
「う〜む。結局、当てが外れた可能性が高いな」
街の特性上、昼でも暗い路地と言うのが多くなるのは仕方がないですけど、これは少し不味くないですか、と言う雰囲気の暗い裏道を歩みながら、そう独り言を呟く俺。
結局、金の酒樽亭を皮切りに、似たような酒場を数件回り、このラ・ロシェールに滞在している傭兵のかなりの部分に声を掛けて、仕事の依頼を行ったのですが……。
大きな収穫はなし。まして、その長身で左腕の無い白い仮面を被った男とやらが今日、現れた気配もない。
確かに、昨日の段階で、イリーガルな仕事を受ける傭兵はかなりの人数が監獄にぶち込まれていますし、アルビオン戦域で負傷した傭兵は、そもそも酒など呑みに来ていませんから、声を掛けられた傭兵の人数自体がそう多い事が無かったのが原因なのですが。
幾つ目かの角を曲がり、出発点の女神の杵亭まであと少し、と言う場所までたどり着いた時……。
「囲まれている」
タバサが普段通りの簡潔な言葉使いでそう言った。独り言を呟くような自然な雰囲気で。
そして、後ろを振り返る事などなく。
「流石に、表通りに出られるとマズイと判断したか。それにしても、動物を操る存在。ビースト・テイマーのような能力を持ったヤツが敵には居る、と言う事なのか」
前後を抑えられたにしては、平然とした雰囲気で俺も答える。
もっとも、前の飲み屋を出た時には、ヤツラの一部が付いて来ていた事は気付いていたのですが。
低いうなり声をノドの奥から絞り出すソイツら。その数、前に十、後ろに二十と言うぐらいですか。
しかし、どいつもこいつも、真っ当な精神状態ではないみたいに感じますね。俺とタバサを見つめるその瞳は、どう考えても人間を見るソイツら……犬の瞳では有りませんから。
憎悪と怒りに満ちた瞳と言う表現ならしっくり来ますか。
「なぁ、タバサ。狂犬病と言う病気を知っているか?」
懐に手をツッコミながら、そう自然な雰囲気でタバサに話し掛ける俺。
大丈夫。タバサも。そして、俺も物理反射を一度だけは行えます。
更に、ふたりとも強化も行っています。俺はアガレス。タバサは森の乙女によって。
俺の問いに、コクリとひとつ首肯くタバサ。その仕草にも、彼女から発せられる雰囲気にも不安の色は感じられない。
暗い路地裏に狂気に満ちた数多の瞳が怪しく光り、その赤く開かられた口からは、だらだら
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