空白期(無印〜A's)
第二十六話 裏 (翔子、カロ、なのは、テロリスト)
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終える」
―――人形を娘と勘違いしたまま。
それを明確に言うことはなかったが、言外には確かに語っていた。病院で検査した結果によると、プレシアは病を患っており、余命はあまり残っていない。さらに、事件のときに無理矢理魔法を使ったせいで悪化し、今では魔法使いとしてのリンカーコアでさえ縮小してしまうような有様なのだ。
翔子は、母親としては、プレシアに少しだけ同情する。娘を亡くしてしまった悲しみは理解できるとはいわない。翔子は子どもを亡くしたことがないのだから。だが、母親にとって子どもとは、自分で痛みを感じて生んだもう一人の自分と言っても過言ではないのだ。愛情を注いでいたのであれば、子どもを亡くしたときの悲しみは計り知れないだろう。
だからこそ、飛びつくしかなかった。彼女は、求めるしかなかったのだ。手を伸ばす位置に、つかめる位置に希望があるとすれば、伸ばさずにはいられなかった。それがたとえ、道徳に、法に反するとしても。
彼女の行動原理は理解できる。理解できるが、彼女がフェイト―――アリシアに行ったことは許せない。許せるはずもなかった。
もしも、プレシアが健常者であれば、恨み言の一つでも言ってやっただろう。だが、今の彼女は翔子が何を言っても理解できないだろう。言っても無駄なことは分かっている。だが、それでも、これは、けじめだった。彼女がどのような経緯でアリシアを生み出したとしても、彼女は確かにここにいるのだから。
―――プレシアさん、あなたがしたことは私は許せません。でも、アリシアちゃんを生み出してくれたことには感謝します。アリシアちゃんは、きちんと育てますから。
それだけを心の中で告げ、一度、彼女に届くように、と目を瞑ってしばらく考え込んだあと、翔子は目を開いて、リンディに目配せした。
「いいのですか?」
「ええ、行きましょう」
もしかしたら、アリシアが起きているかもしれない。彼女は、寂しがり屋だから、もしかしたら、自分がいないことで不安がっているかもしれない。そう考えると翔子も、あまり長居をしようとは思わなかった。
翔子が、背中を向けたとき、不意に声が聞こえたような気がした。
―――フェイトのことよろしくお願いします。
「どうかしましたか?」
声に気を取られて足を止めた翔子を心配したのだろう。リンディが、何か不安そうな顔で尋ねてくる。しかし、翔子は、なんでもない、ということで微笑むと足を進めた。
振り返ったときに見たが、プレシアが、正気に戻ったような様子は見えなかった。今の言葉は、翔子が望んだ幻聴だったのだろうか。だが、それでも、それでも構わないと思った。自分達のほかにもアリシアを心配してくれる誰かがいるのだから。
少しだけ心強くなりなが
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