空白期(無印〜A's)
第二十六話 裏 (翔子、カロ、なのは、テロリスト)
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シアは、目を瞑ると、そのまま寝息を立て始めてしまった。疲れているわけではないだろうが、先ほどのショックだったとは容易に想像できる。
「ふむ、これは、珍しい」
先ほど、無神経な質問をしてきた医者が珍しいものを見るような目でアリシアを見ていた。だが、アリシアをあんな症状に陥らせた医者にいい感情等浮かぶはずもなく、思わず翔子は、医者を睨みつけるような形になってしまった。しかし、翔子の形相を見たのか、能面のような微笑を浮かべていた医者が、その表情を崩して申し訳なさそうな表情をしていた。
「すいません。どうしても、聞かなくちゃいけないことでしてね。でも、そのおかげで色々分かりました」
翔子からしてみれば、彼がアリシアについて分かることよりも、アリシアがこんな状況になった事が問題だった。
「ああ、そうだ。彼女を寝かせるなら、隣の寝室を使ってください。私は、ハラオウン提督とお話があるので……」
おそらく、アリシアに関することだろう。しかし、寝かせてもらえるなら、それは有り難いことである。原因が元々目の前にいる医者のせいでもあるのだが。まだ体重の軽いアリシアを抱えて隣の部屋へと行くことにする。途中、すれ違ったリンディが、申し訳なさそうに頭を下げてきた。
彼女も知らなかっただろうに律儀なことだ、と思いながら、翔子はアリシアを隣の部屋に運ぶのだった。
◇ ◇ ◇
蔵元翔子は、目の前のガラスの向こう側に見える女性を見ていた。
真っ白な部屋。白いベットと小さな引き出しが存在するだけで後は何もない空間だった。だが、それだけで、彼女は十分だったのだろう。
―――プレシア・テスタロッサにとっては。
プレシアは、病院服のままベットの上で少し頭の部分を傾け、背を預けるような状態で座っていた。座りながら、人形の髪を梳いていた。その表情は慈愛に満ちており、持っているのが人形でなければ、娘を慈しむ母親の姿に何の違和感も抱かなかっただろう。
しかし、彼女の手に握られているのは、小さな人形。それを本当の子どものように、丁寧な手つきで毛糸の髪の毛を梳いていく。プレシアの口が時折動く。口の動きは、「今日はどんな髪型にしようか?」と言っているようにも見える。
そんな光景を蔵元翔子は、ガラス一枚を隔てた向こう側から見ていた。隣には、ここに案内してくれたリンディの姿もある。
アリシアを隣の部屋のベットに寝かせた後、翔子は、アルフに秋人とアリシアの面倒を頼んで、リンディにアリシアの母親―――プレシアの元へと連れて行ってもらうように頼んだのだ。
理由は簡単なものだ。彼女なりのけじめのようなものだ。
「プレシアは、事件に関しては不起訴になるでしょう。そして、ここで一生を
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