空白期(無印〜A's)
第二十六話 結
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地球の日本という国にいて、テロという事態に遭遇する確率は一体いかほどだろうか。少なくとも前世と今世をあわせてもうそろそろ三十年ほどになるが、その機会は一度もなかった。つまり、限りなくゼロに近い確率だといっても過言ではないだろう。しかしながら、僕は、その地球の日本にいれば、ほとんどゼロに近い確率であるテロに遭遇している。日本から出たのが不味かったのか、あるいは、僕の運が悪かったのか、現時点で検証する術はない。
さて、手に黒光りする拳銃を手にしたおじさんというべき年齢に達しているであろう彼は、軽く引き金に手をかけ、いつでも発砲できることを示しながら、ショッピングモールのど真ん中、しかも、防火壁が降り、周囲と隔絶された空間の支配者になっていた。そういった意味では、彼が持つ拳銃は魔法の杖となんら変わらないのかもしれない。
そして、誰もが、彼の指にかけられた拳銃に遠慮して動く事ができない。当たり前だ。彼のそれが本物であることは先ほどの一発で既に証明されている。実際は、小指程度の鉄の塊だ。しかし、それが持つ殺傷能力は高い。下手をすれば、一発であの世行きである。
だから、誰も勝手に動いて目をつけられたくないのだ。その行動で、彼の注意を向けたくないから。その引き金に手をかけられた銃口が自分に向けられたことを恐れているのだ。
しかし、我ながら、嫌に落ち着いていることを疑問に思う。確かに、経験した事がない状況に緊張しているのか心臓はバクバクと激しく高鳴っているが、思考はクリアでパニックにはなっていない。なぜだろう? と考えてみたが、よくよく考えれば、僕の人生は、前世とは異なり、ありえないことばかりだ。
まるで、『ありえない、なんてことはありえない』ということを証明するかのように。まず、二度目の人生というオカルトめいたものを経験し、魔法が実在することを知り、自分でも魔法が使えている。それに、世の中には、吸血鬼という人種がいることさえ知っている。
よくよく考えてみると、テロよりもよっぽど確率的にはゼロに近いと思っていたことに出会っていることに気づいた。なるほど、確かに緊張するような要素はあったものの、混乱するほどパニックになるようなことはない。そもそも、力で脅されることは、これで二度目だ。一度目は、まさかの私刑というか、リンチに近かったが。
「ねえ、ショウくん、どうするの?」
「え?」
一方で、僕の隣に立っていたなのはちゃんは、いつもと変わらなかった。テロリストであるおじさんに怯えるような様子をまったく見せず、まるでそれが日常の一コマのように平然としている。もしかしたら、なのはちゃんも僕と同じような感覚なのかもしれない。いや、しかし、それでも表情一つ変わらないというのはすごいと思うけど。
相変わらず、
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