空白期(無印〜A's)
第二十六話 起
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ましい表情で、見ていたリンディさんだったが、いつまでも別れを惜しんで時間を費やすわけにはいかない。だから、リンディさんは、頃合を見計らって一言だけ告げた。
「行きます」
それが、僕たちを魔法世界へと誘う一言だった。
◇ ◇ ◇
魔法世界への旅行。一体どうやっていくのだろうか、と二十歳という精神年齢をしていながらワクワクしたものだが、僕の期待を裏切るように魔法世界への道のりは実に簡易なものだった。アースラと同じく次元転送にて、クロノさんたちの職場である本局といわれる場所へと転送された。本局といわれるだけあって、その建物は非常に大きく、これが次元空間に浮かんでいるというのだから、僕の理解をはるかに超えていた。そこから、今度は映画で見たことあるような時限転送装置に乗せられて、また転移。どこかのビルのような建物に転送され、そのビルから一歩外を出れば、目的である魔法世界―――ミットチルダへの到着だった。
「これが……魔法世界か……」
ビルの自動ドアから外に出た僕は感慨深く呟いた。
おそらく、月に初めて足を踏み入れた人間は同じような感想を抱いたのだろうな、と勝手に想像した。もっとも、僕が踏んだ大地は、地球とほぼ同じなものではあるが。
「ショウくん、どうしたの?」
「ん、これが、魔法世界かぁ、ってね」
僕より少しだけ遅れて出てきたなのはちゃんが、物珍しく風景を見ていた僕を見ながら尋ねてきたので、視線を移さず何気なしに答える。僕を見習ってか、彼女も僕と同じように辺りを見渡す。そして、一言ポツリと零す。
「あんまり海鳴と変わらないね」
がくっ、と体を崩しそうな感想ではあるのだが、的を得ているのだから仕方ない。そこからの風景は、地球とほぼ変わらない。高いビルが乱立し、窓ガラスが太陽の光を反射している。しかし、さすが魔法世界、というべきだろうか、近年問題となっているヒートアイランド現象のような室外機による生ぬるい暑さを感じることはなかった。それどころか、日本の夏のようにじめっとした暑さではなく、からっとした暑さで、不意にそよぐ風が涼しさを感じさせてくれる。ただ、一つだけ大きく変わるとすれば、空だろう。いや、空が青ではなく紫をしているというわけではない。空に見えるのは、青に間違いない。しかしながら、その青の中に浮かぶ衛星の数が地球とは異なった。通常、昼の月ぐらいしか見えないが、魔法世界では、少々異なるようで、十を越える衛星を確認する事ができた。
ついでに所要時間、わずか一時間で来られたことから考えても、次元転送という技術を知らなければ、目隠しされて近所に車で連れて行かれたといわれても不思議ではないだろう。地球人では初めて次元世界を超えて旅をしたにも関わらず実にあっけな
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