空白期(無印〜A's)
第二十六話 起
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に手を差し出し、挨拶を交わしていたが、なのはちゃんは、ただ一言、不機嫌そうに「よろしく」と答えただけだった。クロノさんが不愉快そうな顔をせずに微笑みを浮かべていたのは、大人の余裕なのだろうか、なのはちゃんのつれない態度にも何も言うことはなかった。さらに続いて、最後にアリシアちゃんに挨拶と共に手を差し出したのだが、今度はなのはちゃんよりも露骨にクロノさんを避けて、僕を盾にするように背後に隠れる。やはり、初対面の人は苦手なようだ。
「えっと……翔太くん、彼女は」
「すいません、少し人見知りするんですが、母さんか、僕がいれば大丈夫ですから」
少しの時間、一緒にいて相手が自分に害しないと分かれば、アリシアちゃんも警戒を解いてくれるのだが、その少しの時間は人によって異なる。すぐに仲良くなる人もいれば、一週間ぐらいで仲良くなる人もいる。だが、少なくとも近くに信頼できる人―――僕か、母さんがいれば、まったく口も開かず、警戒心むき出しということもない。
「アリシアちゃん、この人は、大丈夫だから」
そういって、背中に隠れていたアリシアちゃんを正面に出すと、クロノさんは、もう一度、これから二週間よろしく、という言葉と共に片手を差し出した。それに対して、アリシアちゃんは、不安がるように僕とクロノさんを交互に視線を移し、やがて、おずおずと片手を差し出して、やや触れるか、という距離でクロノさんの手に一瞬だけ触れると、蚊の鳴くような声で「よろしく」と返していた。ちょっと気の短い人なら、不愉快そうな顔の一つでも取っていいのだろうが、クロノさんは、人が良いのか、「ああ、よろしく」と笑顔で返していた。
その後は、他愛もないお互いの近状報告を行っていた。しかしながら、日常が事件に満ち溢れているわけではない。本当に他愛もない話をクロノさんとしていた。アリシアちゃんは、まだ警戒モードだし、なのはちゃんもどこか不機嫌そうで口を開きそうにないため、僕しか相手ができないというのが正直なところだ。
さて、クロノさんの主な相手は、僕たち子どもだったようで、大人への対応はすべて、リンディさんに任せていたらしい。しかし、その対応もひと段落ついたのだろう。頃合を見て、「クロノ」と名前を呼んでリンディさんが僕たちの間に割り込んできた。
「それじゃ、行きましょうか」
リンディさんのその声が、切っ掛けだったのだろう。自然と魔法世界へ行く人たちは、リンディさんとクロノさんの周りに集まり、留守番組は、自然と一歩距離を取ったような形になる。
「なのは、気をつけてね」
「恭也、なのはを頼んだぞ」
「母さん、翔太、アリシア、病気とかには気をつけるんだぞ」
留守番組から口々に告げられる見送りの言葉に笑顔で、手を振りながら応えていた。それを微笑
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