空白期(無印〜A's)
第二十五話 裏 (アリサ、すずか、なのは)
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しかしながら、恋心は、そんな嬉しい感情だけをすずかに与えてはくれなかった。
前までは、翔太がどんな女の子と話していようとも、気にならなかったが、今はではいちいち気になるようになっていた。クラスメイトの女の子と嬉しそうに歓談しているだけで、ムカッ、としてしまうのだ。そんな子と話さないで自分ともっと話して欲しいと思ってしまう。
もちろん、そんなことをすれば、翔太から嫌われることは目に見えているので、ぐっと我慢しているが、我慢すればするほど、心の中で今のすずかには分からない何かが溜まっていくような気がするのだ。もっとも、それは、翔太と二人だけで話をすれば綺麗さっぱり消えてしまうのだが。
それは、たとえ、相手がアリサでも同じようになってしまう。いや、翔太とアリサの関係を知っているだけに、クラスメイトの有象無象の女の子とは不安は比べ物にならないが。しかし、それを表には出さない。出せない。少なくとも、アリサはすずかにとって得がたい友人であることは間違いないのだから。
さて、そんな日々を送っているすずかは、現在、翔太を下足場で待っていた。今日は、翔太が誰とも約束していない事が分かっていたからだ。
しかし、隣で少しだけ苛立っている様子が伺えるアリサが気になった。翔太が用事がないことをどうして知っているのか? と尋ねてきたアリサだが、そんなものは、少しだけ翔太の様子を伺っていれば分かることである。
誰かと用事がある場合、翔太はその用事がある相手と一緒に外に出る。男の子であれば、サッカーである事が大半だし、女の子と一緒であれば、そのグループの中の誰かの家にお邪魔したりするのだろう。時には、教室に残っていつまでも女の子と話していることもある。
だが、今日に限っては、翔太は一人で外へと出た。一ヶ月前までなら、隣のクラスの高町なのはと会うのだろうか、と思っていたが、あれから高町なのはとは一週間に一回ほどの頻度で会っているが、それは決められた曜日であり、それは今日ではなかった。もしも、何かしらの用事があるとすれば、誰かに言付けていくだけに翔太の用事は職員室かどこかで、一人であることは容易に想像できることである。
そんなことにアリサが気づいていないとは思えない。自分でさえ、翔太の様子が気になって仕方なく、授業中でも気を抜けば、翔太のほうを見ている事があるのだ。すずかと同じ感情を抱いているであろうアリサが気にならないわけがないと思っていたが、違うのだろうか。
もしかしたら、姉の言っていたことが本当かもしれない、とすずかは思った。姉の忍が語ったのは、あの恋心を自覚した次の日だっただろうか。アリサと翔太の二人が恋仲かもしれない、と姉に伝えたときの言葉だ。
「もしかしたら、あの二人、『恋愛ごっこ』かもしれないわよ」
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