空白期(無印〜A's)
第二十五話 裏 (アリサ、すずか、なのは)
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ァリンが、忍の話は惚気話というらしい。
忍の話の中で惚気話は、すずかから多大な体力を奪っていたが、それでも得られたものは少なくない。少なくとも、どうやって恋というものを戦い抜けばいいのかぐらいは、分かった。
まず、大事なことは二人の時間を増やすことだ。忍はデートと言っていたが、その定義は実に難しい。男女の二人で遊びに行くことと定義する人もいれば、恋仲の男女が行くこととも定義する人もいる。どうやら曖昧なものらしい。しかし、そこは、恋する乙女であるすずかだ。せめて自分ぐらいは、と少なくともすずかはデートのつもりで翔太を図書館へと二人だけで連れ出した。
すずかが図書館をデート場所に選んだのには、理由がある。前々から翔太と一緒に図書館に行きたかったというのはうそではない。しかし、それ以上の理由としては、アリサだ。他の場所、例えば商店街へのウインドウショッピングなどを選択すれば、きっとアリサが勘ぐってくるだろう。どうして、自分を誘わなかったのか、と。翔太とアリサがキスをするような仲であれば、当然だ。
しかしながら、図書館であれば、その構図は少しだけ変わる。少なくとも図書館の中では、静かにというのが不文律だ。だが、アリサはそんなに静かにしているような性質ではない。長時間、図書館の静寂には耐えられないだろう。これが、翔太とすずかとなれば、話は異なる。翔太もすずかも本を読むのは半ば趣味のようなものだ。いくらでも時間は潰せる。場所が図書館というだけでアリサを誘わない理由としては十分なのだ。だからこそ、すずかは翔太とのデートには図書館を選んだ。
翔太との図書館は、すずかが思い描いていたものよりもずっと素敵なものだった。
自分がお勧めの本を翔太に勧め、翔太もお勧めの本をすずかに勧める。お互いに読んだ本があれば、この本は面白かった。あのシーンが面白かった。タイトルだけで選んでみたら、面白くなかった、など話題に尽きることはない。しかも、先ほど述べたように図書館では静かにが不文律だ。自然と声は小声になるため、お互いに顔を寄せて話すことになる。それは、少しだけ動けば、あの日の夜のアリサと翔太と同じように唇が重なるような距離。ドキドキしない方がおかしかった。ただ、翔太が平然としていたのが、気にいらなかったが。
すずかが、翔太への恋心を自覚して、少しだけ翔太の印象が変わった。彼がすずかに向かって笑ってくれると嬉しいし、もっと、その笑顔を見てみたいと思う。温泉で貰ったアクセサリーをつけていて、可愛いよ、といわれたときは、どきんと心臓が跳ねたのではないか、というほどにドキドキしたし、彼の一挙一動が気になって仕方ない。
すずかは、恋という感情に底なし沼のようにずぶずぶと沈んでいくのを自覚しながらも、それを心地よいとも感じていた。
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