空白期(無印〜A's)
第二十五話 裏 (アリサ、すずか、なのは)
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教えるには十分な存在だった。
そのアリサと同じ少女の名前は、蔵元アリシアというらしい。翔太の背後に隠れるようにして顔をだけを出しながら、彼女は、オドオドとした様子で、どこか頼りなく消え入るような声で自己紹介を行った。その暗い様子がアリサには、気に入らなかった。自分と同じような存在が、そんなに怯えたような、オドオドしているような表情をしている事が。
―――その姿が、もしかしたら、歩んでいたかもしれない自分の姿と被ってしまったから。
だから、その暗さを吹き飛ばすように、アリシアに活を入れるように名乗る。
「ああっ! もうっ! 暗いわねっ! あたしはそういうの嫌いなのっ! あたしは、アリサ・バニングスよ。ショウの親友なんだからっ!」
アリサは思わず、アリシアを無理矢理、前を向かせたが、それが正しいかどうか分からない。ただ、自分と同じような存在が下を向いて暗い表情をしている事が許せなかったのだ。多少強引でも前を向いたほうがいいはずだ。少なくても下を向いていても、目の前に広がっているかもしれない光には気づかないのだから。
さて、自己紹介が終わった四人は、そのまま蔵元家へのリビングへと向かう。アリサがこの家に来たのは、初めてではない。もはや数えるのが億劫な程度には来ている。
リビングでアリサを迎えてくれたのは、相変わらずふわふわした微笑を浮かべている翔太の母親だ。アリサは、翔太の母親の微笑が好きだった。すべてを包んでくれそうで、温かそうで。もちろん、アリサの母親である凛とした表情もカッコイイとも思うが。種類が違う二つの笑みに優劣はつけられそうにない。
合計六人が座れるテーブルに翔太とアリシアが、すずかとアリサが隣り合って対面に座ると、翔太が編入の話をし、アリシアがそのことをアリシアが喜んでいた。しかしながら、アリサが、同じクラスになれるかどうか分からない、という発言から状況は一変した。してしまった、というべきか。
先ほどまでは、無邪気に明るかった彼女の表情は、アリサの一言と翔太の肯定の一言の後にずぅん、と落ち込んだ表情で、ぶつぶつと呟くような小さな暗く重い声で言う。
「そんな………お兄ちゃんと一緒じゃないと意味がないのに………お兄ちゃんと一緒じゃなきゃ……」
沈みきった重い声は、アリサの背筋をゾクッと凍らせるには十分な声だった。なぜなら、アリサには、アリシアが抱えている不安が理解できるから。アリサは、いつだって、テストが終わった後にはちらっ、とその考えが脳裏をよぎってしまう。
万が一にでも解答欄がずれていたら、計算ミスをしていたら、他のみんなが自分よりもいい点数を取っていたら、何らかの要因によって自分の成績が下がってしまったら。それは翔太とすずかと別のクラスになることを意味してい
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