空白期(無印〜A's)
第二十五話 裏 (アリサ、すずか、なのは)
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影が見えた。よくよく確認しなくてもその人影が翔太だということは、直感的に理解できた。
「遅いじゃないっ!」
すずかの奇妙な態度に対する不安と本当に翔太が来たことへの驚きと苛立ちに思わず声を荒げてしまったのは仕方ないことだろう。もっとも、アリサが声を荒げることは珍しいことではないためか、翔太は、少し驚いたような顔はしたものの、不快な顔一つすることなく、笑って受け流していた。
「あれ? 待っててくれたの?」
やはり、翔太は誰にも放課後の予定を言っていなかったのだろう。だからこそ、ここで待っていた自分達を不思議そうな表情で見ていた。すずかが待つって言ったから、と答えようとしたアリサだったが、その前にすぅ、と前に出てきたのは、隣にいたはずのすずかだった。
「うん、だって、ショウくん誰とも約束していなかったでしょ? だから、一緒に帰られるかな? って、思ったから」
割り込むような形で入ってきたすずかは、どこか嬉しそうに翔太に近づく。割り込まれたようで面白くないアリサだったが、どちらにしても答えることは一緒だったため、まあ、いっか、と流すことにした。それよりも、気になるものがアリサの目に入ってきたからだ。
「って、あれ? ショウ、何持ってるのよ?」
翔太の右手に持っている抱えられたいくつかの小冊子だ。残念ながら、アリサの位置からは小冊子のタイトルは見えることなく、内容までは伺えなかった。それは、ちょっとした好奇心だった。どうせ、明日にでも配られるものを翔太が先に手に入れたとか、そんなものだろう、と。だからこそ、次に何気なく翔太の口からもたらされた答えは、アリサに衝撃を与えた。
「ああ、これ? 編入の手続きのための書類だよ」
―――編入?
最初、アリサは、翔太が言った言葉の意味を理解できなかった。しかし、それも一瞬だ。アリサの優秀な頭脳は次の瞬間には必死に頭を動かしていた。そして、編入という言葉の意味を正しく理解した瞬間、アリサの背中にゾクッと冷たい何かが走った。その正体は、途方もない不安と恐怖だ。
アリサが望んでいるのは、すずかと翔太とアリサがずっと一緒にいる現実と未来だけだ。そこから、誰かが欠けることなど考えていない。考えたくもない。だが、翔太の一言によって、その考えが誘引された。翔太が目の前から消えてしまうかもしれない未来。手を伸ばしても届かないかもしれない未来。ようやく手に入れた親友が消えてしまう未来。
今まで考えるまでもなかった未来が、翔太の一言によって現実味を帯びたものをなってしまい、アリサの心の中は、不安と恐怖で一杯になってしまったのだ。
だからこそ、慌てて、翔太に詰め寄ると思わず肩を掴んでしまった。しかし、それを悪い、と思う暇もなくアリサは慌てて真意を確か
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