空白期(無印〜A's)
第二十五話 裏 (アリサ、すずか、なのは)
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のだろうか、激昂しているように片手を振り上げている。その様子を自分も宿題なのだろうか、ノートを広げながら、苦笑と共に見守っている翔太の姿が映し出されていた。
翔太と誰かが映っているだけなら、なのはここまで呆けることはなかっただろう。なぜなら、翔太の周りは、人で囲まれているから。なのはにとって、翔太がそうであることは当たり前のことだし、翔太ほどのいい子が人気者ではないはずがないので、それは許容範囲内だ。
だが、だが、しかし、目の前の映像は、予想外だった。翔太と一緒の家に住んでいるだけでも、羨ましいと思えるのに、それどころか、アリシアは、翔太の親友を自称する女とバケモノの女とはいえ、まるで友達のように囲まれている。
それは、間違いなく、なのはが小学校に入学する前に描いていた、二年前に諦める前まで描いていた絵と同じようなものだった。友達に囲まれて、楽しそうに笑いながら、時に泣いてもいい、それでも、友人と呼べる人たちと囲まれて何かをする。なのはが思い描きながらも実現できなかった絵だった。
―――あいつは敵なのにっ! 敵のくせにっ!!
悔しさのあまり、血が出そうなほどに唇をかみ締める。なのは気づいていないかもしれないが、左手にもまるで、悔しさを耐えるかのように強い力が篭っていた。その目の前の光景に目を離せずいたなのはだったが、不意にバキッという音共に左手に鋭い痛みを感じる。
「あ……」
あまりに強い力が篭りすぎたのだろうか、なのはの左手に握られたシャープペンシルは、握っているところから粉々になっていた。粉々になった際に鋭い破片で切ってしまったのだろうか、手の平にはいくつか小さく裂けた場所があり、そこから血が少しだけ流れていた。
―――どうして、私は……。
思わず涙が流れそうになった。
確かに、自分は蔵元翔太のようにいい子にはなれなかったかもしれない。だから、二年前のあの日にすべてを諦めた。今も翔太以外のすべてを諦めている。なのはにとっての友人は翔太だけで、なのはが憧れて、彼のようになりたいと願い、なれなかった彼だけが友人である事が奇跡なのだから。これ以上望むことは間違っている。
今のなのはの心の中は、不安と悔しさと悲しさでささくれていた。なのはの心はギリギリだ。確かに翔太という安息を得てはいたが、ジュエルシード事件のときと比べると逢瀬の時間は短い。せいぜい、週に一回から二回の魔法の練習ぐらいだ。それ以外は、なのはは、魔法と勉強の時間に費やしていた。
簡単に言うと翔太分が足りないのだ。あの翔太の隣にいるだけで、翔太と話しているだけで、得られる安息の時間が、心休まる時間が、心が満ち足りる時間が圧倒的に足りないのだ。それは、ジュエルシード事件を通して、翔太とほぼ四六時中一緒という時
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