空白期(無印〜A's)
第二十五話 裏 (アリサ、すずか、なのは)
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アリサ・バニングスは、突然、親友である蔵元翔太によってもたらされた話に驚いていた。
そもそも、アリサは、翔太に今日は何か用事があるのか、聞いて、もしも何もなければ一緒に帰ろうと思ったが、すでに翔太は教室から姿を消していた。もっとも、そのこと自体は別におかしく思う必要はなかった。彼は何か用事があれば、アリサたちに別れの挨拶だけを告げて、その用事へ向かうのだから。今日だって、すでに別れの挨拶は告げていた。だから、今日は何か用事があるのか、と諦めてもう一人の親友である月村すずかと一緒に帰ろうと思ったのが、彼女はそれを拒否した。
「え? どうしてよ? 何か用事があるの?」
「ううん、でも、ショウくん待ってようかな、と思って」
すずかの返答にあれ? とアリサは思った。塾のときは一緒に帰るが、翔太がふらっ、と放課後に消えることは珍しいことではない。そのときは、もう既に別の場所へと向かっているはずだからだ。つまり、いくら待ったところで、翔太が戻ってくるはずがないのだ。
「待っても無駄じゃない? ショウなら、もうサッカーか、他の子のところにいってるんじゃない?」
一年生か二年生のときであれば、翔太が他のところに遊びに行くといえば、サッカーがほとんどだったが、最近は、サッカーだけではなく、カードゲームや果ては、他の女の子と遊ぶことも多くなっていた。翔太の親友としては、他の子と遊ぶぐらいなら、自分達と遊べば良いのに、とは思うが、親友だからこそ翔太を束縛したいとは思っていなかった。
翔太は、自分とは違って、たくさんの友達がいるのだから。それを考えると少しだけ胸が痛くなる。しかし、これでいいのだ。アリサからしてみれば、欲しいのは、たくさんの友人ではなく、二人の誇れる親友なのだから。
だが、アリサの返答に対してすずかは、きょとんと首をかしげた。
「あれ? ショウくん、今日は誰とも約束してないから用事はないはずだよ」
「……なんで、そんなことすずかが知っているの?」
翔太に直接聞いたなら分かるが、今日はほぼ一日アリサと一緒にすずかはいたのだ。翔太とも休み時間に話したが、その間に翔太の放課後の予定など話にあがっていなかった。つまり、アリサが聞いてないということは、すずかも知らないはずなのだ。
しかし、アリサの疑問を聞いたすずかは、少しだけ考えるような仕草をした後、何かに納得したようにふ〜ん、と呟いた。
「なによ?」
「別になんでもないよ」
すずかの呟きの裏に含んだものを感じたアリサは、問いただそうとするが、それをすずかはいつもの柔らかい微笑で受け流していた。そのすずかの表情から、嘘だ、と直感的にアリサは思ったが、もう一度すずかの真意を問いただす前にすずかが身を翻し、教室
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