空白期(無印〜A's)
第ニ十五話
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にしろ、と言いたいところだが、蔵元には、クラスの世話を焼いてもらっているからな。今回は、1のケースで進めておいてやるよ」
「ありがとうございます」
たぶん、さきほどの僕の落胆したような表情でも見られてしまったのだろう。めんどくさい事が嫌いな先生にしては珍しく、動いてくれるようだ。ただし、借りは高くつきそうだが。
「ほら、これに必要事項を記入して持ってくるといい。後は、パンフレットやら、色々だ」
ぽんぽんぽんと渡される冊子の数。編入試験について色々書かれていたり、聖祥大付属小学校のパンフレットだったりする。先ほど取り出した紙袋の中にまとめて入っていたのだろう。似たようなものがいくつか先生が取り出した紙袋の中にも見える。実は、編入に関する扱いの冊子は以前に貰っていたのだが、一つだけ貰わないというもの悪いような気がしたので、素直に受け取っておくことにした。
「分かりました。本当にありがとうございました」
「なに、良いってことよ。蔵元にも教師らしいところを見せてやる必要もあるしな」
くくく、と少しだけ意地が悪そうに笑う先生。もっとも、僕が先生が先生であることを忘れたことはないのだが。まあ、それはともかく、これで用件は終わりだ。早く母さんやアリシアちゃんにこのことを伝えようと、僕は先生から貰った冊子を脇に抱えて、回れ右をしたのだが、動こうとした瞬間、先生に肩を掴まれた。
「ちょっと待った!!」
僕が振り返ると先生が、少しだけバツが悪そうな顔をしていた。おそらく、さっきかっこいいことを言ったのに、こうして呼び止めてしまったため、気まずいのだろう。
「なんですか?」
せっかくかっこよかったのに、という落胆を少しだけ声の色に乗せて先生に言うと、先生はバツが悪い顔そのままに視線を宙に泳がせて、やがて意を決して口を開く。
「いや……ちょっと、あれ片付けるの手伝ってくれないか?」
情けない声で頼まれて、先生が指差した先には、パンフレットを出すために散らかした棚と、たくさんの書類が所狭しと床に散らばっていた。
おそらく、先生にもう一度頼むと、再び書類が必要になったとき、今以上に散らかってしまうだろう。先生もそれが分かっているから僕に救援を頼んでいるのだ。ついさっきは、編入をごり押ししてもらった恩がある。だから、僕は仕方ないな、というため息を吐くと、まずは床に散らかっている書類を集めることから始めるのだった。
◇ ◇ ◇
「遅いじゃないっ!」
僕が職員室から帰宅のために直接下足場へと行くと、そこには二人の少女が誰かを待つかのように立っていた。そのうちの一人は、先の言葉で分かるようにアリサちゃんであり、その傍らに寄り添うように立つのは、すずかちゃ
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