空白期(無印〜A's)
第ニ十五話
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僕にも視線が集まる。当たり前だ。同じ苗字をしているのだから。だが、それは仕方ない。なぜなら、彼女は僕の妹なのだから。
そう、アリシアちゃんは先週の土曜日と日曜日に行われた四教科と面接の編入試験に合格した。もっとも、面接は最低限の確認のみで大半は、四教科の試験のみで九割決まってしまうらしいが。その面接試験の後に聞いたのだが、どうやらアリシアちゃんは少しだけ国語と社会の点数のせいで第一学級になれる点数には足りなかったらしい。しかし、かなり高等な問題が入っているはずの算数と理科で満点を取ったため、アリシアちゃんの成績を伸ばすためには、第二学級では力不足ということで第一学級に編入という形になったらしい。
アリサちゃんのスパルタとすずかちゃんと優しい授業は無駄にはならなかったようだ。本当に足りなかったのは一部で、それ以上だったら、さすがに第一学級にはできなかったという話だから。
さて、教卓の隣に立ったアリシアちゃんはその整った顔を不安そうにしていた。アリシアちゃんは、人見知りをしているのだから仕方ないのかもしれないが。一緒に勉強している時間が長かったおかげもあるのかアリサちゃんとすずかちゃんとは、割と普通に話す事ができるようになったアリシアちゃんだが、やはりこうして赤の他人の前にくると不安になるらしい。よくよく見ると今にも涙がこぼれるかもしれない、というほどに目が潤んでいるようにも見える。
しかし、それも意を決してクラスを見渡した瞬間なくなった。その潤んでいたはずの視線は、まっすぐと僕を捕らえていた。先ほどまで不安一色だった表情に笑顔が浮かぶ。そして、嬉々とした声で口を開いた。
「あっ! お兄ちゃんっ! 私、同じクラスになれたよっ!!」
ぶんぶん、と大きく手を振るアリシアちゃん。
うん、嬉しいのは分かる。分かるけど、それは休み時間とかにして欲しかった。今は、自己紹介の最中で、注目するのは僕だけじゃないのに。
しかし、そんな僕の心の願いが届くはずもなく、アリシアちゃんは、何か悪いことした? といわんばかりに小首をかしげ、同世代の女の子がお兄ちゃんと呼ぶことに違和感を持っている同級生が僕に疑惑の視線を向けてくる。いや、一部―――アリサちゃんは、ざまあみろというようなニヤニヤとした笑みを浮かべ、すずかちゃんは仕方ないなぁ、という笑みを浮かべていた。
そんな中、僕にできることは、誤魔化すように、ははははと乾いた笑みを浮かべることだけで、その笑みを浮かべながら、これからもっと大変になるのかな? と心のどこかで確信するのだった。
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